厳冬期・西穂高岳で北アルプスの凄烈な風と雪稜を楽しんできた|テント1泊2日(前編)
最終更新日 2023-12-05
2019年初投稿が随分と遅くなってしまいました。改めまして新年あけましておめでとうございます。
昨年末の12月29日から1月3日まで、静岡県の田貫湖キャンプ場で6年連続となる年越しキャンプを楽しんできました。4日の金曜日から仕事始めとなりましたが5日~6日とすぐまた土日ということで、今年の登り始めとして西穂高岳へ行ってきました。
この時期の西穂高岳テント泊は昨年に続き3度目。ロープウェイを利用して気軽に穂高の雪稜を堪能出来るこのルート。通年営業している西穂山荘を起点とし、初めてであれば西穂独標まででも十分楽しむことができるはず。雪山ステップアップとしても最適の一つと言えるでしょう。
実は土曜日の天候の予報はどこも猛烈な風予報。山の有料天気予報「ヤマテン」によると稜線上では25mほどの風が吹き、行動は控えた方がいいとのこと。ただ日曜日については午前中を中心に登山チャンスがあるという予報。日曜日の日帰りで八ヶ岳・甲斐駒・西穂でも良かったのですが、折角だから前日入りしてテントでゆっくりと本でも読もうと、アプローチで風の影響を受けにくい西穂高岳としました。
目次【お好きなところから】
名古屋から新穂高ロープウェイまでのアクセス・雪道装備は万全に
土曜日の天候が芳しくなく、新穂高ロープウェイの始発も9時から。初日は西穂山荘までの1時間ほどの登りのみということで名古屋を出発したのは午前5時過ぎとゆっくり出発しました。
東海北陸自動車道を北上すると、高鷲付近から雪が降り始め、下道に下りた頃には道路上でも積雪が現れました。高山市街であれば大丈夫ですが、平湯を過ぎた辺りからは急な下りも相まってスタッドレスを履いた4WD車でも時速40kmで慎重に運転。チェーン規制も始まったし予備に購入しておこうかなと思いました。道端にはノーマルタイヤらしき車が立ち往生している様子も何台か見ましたが、準備は万端にしておかないと登山どころではないので気を付けないといけません。
ロープウェイ近くの登山者用駐車場に到着したのは午前8時30分。予想通り車も空いています。そして雪もどんどん降っています。新穂高ロープウェイのHPを確認すると予定通り運行すると案内がありホッとします。もしかしたら風が強くて運休することもあるかもと想定していたので。
気温はそれほど低くなくマイナス5度ぐらい。それでも寒いし雪も強めだったのでしばし車で待機。1時間ほどウトウトしてから準備して出発しました。
第二ロープウェイの鍋平の駐車場へ行く道は途中で進入禁止になっています。
新穂高ロープウェイに乗って一気に標高2000m超の世界へ
新穂高ロープウェイはシーズンによって運行時間が違いますが、この時期は大よそ9時頃から動きます。大よそというのは乗客が多かったり土日だったりするとHPに記載のある時間よりも少し早めに動かすことがあるから。さらに臨時便も次々と運行してくれるので助かります。
新穂高ロープウェイ利用の前には「株主ご優待割引券」を準備
新穂高ロープウェイ利用には各種割引がありますが、最もお得なのが「株主ご優待割引券」の利用。
第一・第二ロープウェイを利用すると大人往復2900円、子ども往復1450円かかるところ、この優待割引券を使うと大人2000円、子ども1000円に割引されます。期間も約1年間いつでも使えるため、私は常にヤフオク等で何枚か確保しています。1枚50円ほどで購入出来ます。
割引券窓口に出して荷物券と合わせて往復2600円。ちなみにロープウェイの利用者の9割以上は一般客。明らかに恰好や荷物の量が違います。ザックを下ろしてゴンドラのスミの方で好奇の視線を浴びながら静かにしています(笑)たまに写真を撮られたりします。
あっという間に雪山の世界ーモフモフの雪をかき分け西穂山荘へ
ロープウェイを乗り継いであっという間に標高2156mの西穂高口駅へ到着。お客さんは展望台やロープウェイ付近を散策できる「千石園地」へ向かいます。登山者は登山口へ。登山口では係りの方が登山届を出したかどうか確認されていました。私は事前にネット提出済み。
雪も降り続き、気温も低くなっていたので出発と同時にアイゼン装着。
新雪の中を歩きます。まさにモフモフで最高に快適。
西穂山荘までは急げば40分程ですが、この日はここしか歩く行程がないのでユックリノンビリ行きます。汗をかくと寒いですしね。厳冬期テント泊装備やウェアについて別記事で書いてみたいと思います。
前半は若干のアップダウンをへながら進みますが、次第にかなりの急登が現れます。逆に急登が現れれば山荘までは残りわずかという証拠。頑張りましょう。
後の女性二人組もテント泊の様子。ロープウェイも遅らせたので、出来るだけいい場所を確保するために頑張って登ります。傾斜はこんな感じ。この日は新雪が降り積もっていましたが、ここはカリカリに凍結すると危ない・・・。
出発から1時間ほどで山荘へ到着しました。
西穂山荘テン場は超快適、ただし雪山テント泊はなかなか大変
「にしほ君」じゃなくて「さかい君」とご対面。今年のさかい君はとってもスリム。雪が少なかったのでしょうね。ちなみに「さかい君」とは以前働いていた山荘スタッフの女性の名前とか・・・なぜ君?
雪は降り続いていますし、結構風があります。予報通り稜線に上がれば爆風なのでしょう。「丸山で引き返してきた」というような話をその後聞きました。無理は禁物です。ノンビリとテント停滞を決め込みます。
到着してみると何とテン場は一番乗り。持参したスコップで穴を掘り、パパっとファイントラック「カミナドーム1」を設営です。
受付を済ませ、早速ですがトイレへ行きます。テン場利用者のトイレは極寒の屋外です。屋外と言っても屋外建屋の中にトイレはありますが、小屋内とは違いやはり極寒。トイレの中では吹き込んだ雪が凍っています。
消毒の臭いが強烈です(笑)とても綺麗なトイレ。
トイレの話は置いておき、テント設営後は目の前の小屋で温かい食事をいただきます。西穂山荘と言えば「西穂ラーメン」。今回は味噌ラーメンをいただきました。
おでんとビールもご褒美に。何のご褒美?美味しかったですよ。
自販機で売られる水やアルコール類。まあ山価格ですよね。この時期水は提供されていないので、購入するか雪から作るかしかありません。殆どの方は雪から作られると思います。
食後はダラダラと小屋の食堂で持ち込んだkindleで読書。一冊読み切りました。
テント場は小屋の目の前ですから快適なのですが、雪山と言えばということで、面倒な作業ですが水を作ります。そのためだけにテントに戻ってきました(笑)寒い!
シュラフに包まって上半身だけだして集めた雪をコッヘルで溶かします。20分ほどかけて2リットルの水を確保。飲み水と食事作り用の水とします。その後はいつの間にかウトウトと・・・。ナンガのUDD810DXに包まっていればポカポカです。
夕食は2000円払って小屋食に~夜は比較的暖かくマイナス14度程度でした
夕食は小屋でいただくことにしました。だって一人だし、寒いし(笑)。テント泊の人は2000円で夕食が食べられます。お替り出来るし、暖かいし、妥当な金額です。
この日の山荘泊は10名ぐらい?テントも5張りと少な目でした。それぞれグループで来られている方が多く、食べ終わるとすぐに部屋に戻られていたので特に会話もなし。私は隣になった男性の方と翌日のことを少し話しました。翌日山頂で偶然一緒になり、下山は一緒に下りることになった方です。いつもは一人で登ることが多いのですが、こうやって知らない方と話したり、偶然一緒に登るというのも面白いものですね。
テントに戻り、シュラフに潜りこんだのは午後6時半頃。あたりはすでに真っ暗。少しだけ読書をして眠っていきました。この日の気温は山荘付近で最高マイナス8度、最低マイナス14度程度だったそうです。比較的暖かい夜でした。
それでももちろんテント内は結露が凍っていましたが。この時期シュラフカバーは必須です。ちなみにテント内の最低気温はマイナス10度ぐらいだったようです。
外は引き続き雪が降り続き、時折テントが変形するような強い風も吹いていました。
寝る時にも履いたままでいられるオーバーパンツとして、ミレーのティフォンシリーズの透湿防水パンツは優秀でした。今回もずっと着っぱなしでいられる快適さ。柔らかくゴワゴワせずに、それでいて防水。おススメです。
まずは西穂独標までの強風雪稜歩き
夜のうちにトイレに起きることもなく、よく寝れました。タイマーの音で目を覚ますと朝5時。まだ辺りは真っ暗です。外を見ると前室の間にも昨夜より随分と雪が吹き込んでいます。登山靴はビニール袋にくるんでしまっているので大丈夫。
一晩で20~30cmは積もったようです。外に出ると風は強いものの満天の星。テントに戻って味噌汁やおかず。シュラフには前日妻が作ってくれたおにぎりを入れていたので、まだ暖かいオニギリを二つ。行動食なども口にしてエネルギーを補給。雪山は体力勝負なので食べないと動けません。
いつでも出発できる準備は整ったのですが、何せ寒さと風の強さで出る気がしなく、いつのまにかウトウト・・・。
朝陽とともにテントを出発、すぐに絶景が目の前に
急に外が明るくなってきたと思ったら、東の空が赤く染まり始めていました。合計5張りのテントでも準備の音がしています。
空は青く晴れ渡っています。まさに予報通り。ただ、風は強い!
靴を履き、ゲイターを装着し、アイゼンをつけて小屋目の前の急登を登り始めます。
朝陽が差し込む中を出発。テント泊の魅力はこの時間帯に山の中に居られることでしょうか。朝陽の色というのは雪にとっても映えて美しいです。
少し登って振り返ります。小屋とテント場。奥には焼岳と乗鞍岳。左手には霞沢岳。ここからの風景がとても好きです。そして特にこの時間帯のここからの景色は絶景と言えると思います。
もう一度霞沢岳。
そして、目指す西穂高岳への雪稜に目を向けます。東側斜面がオレンジに染まり始めました。ここからコースタイムで約3時間。11の峰を越えて到達します。
左手には雲海の向こうに11月に登った笠ヶ岳。抜戸岳からの長い稜線が印象的。笠ヶ岳の稜線に朝陽が当たって染まり始めます。
風速20ⅿ近くの暴風が吹きすさぶ雪稜。雪煙が常に舞い上げられ、あっという間に吹き飛んでいきます。バラクラバの上からヘルメットをしている頭部はジンジンと冷気で冷やされていきます。厳冬期の北アルプスに来たということを実感する時間でした。
爆風に飛ばされないようにしながら西穂丸山から独標直下までの長い登り
小屋目の前の急登を登り切ると、しばらくは緩やかな尾根歩き。すぐ目の前に西穂丸山のマークが見えてきます。
西穂丸山までは危険個所は全くありません。雪山初心者の方はここまででも雰囲気を十分に感じられるはず。
丸山からは斜度はそれなりにあるものの広い稜線をジグザグに登ります。汗をかかないようにペースに気を付けて登り切ると、目の前に西穂独標が現れます。
写真中心付近の黒っぽく丸く盛り上がった部分が独標。
西穂独標
独標をズーム。
手前の岩稜を一度下り、そこから独特な形の岩峰である「独標」へ岩と雪のミックス帯を登ります。
特に独標直下10ⅿほどの斜度のある登りが要注意。雪の状態によって難易度も随分違ってきます。
西穂へはこのような雪のトラバースが何か所かあり、岩にアイゼンを引っかけて斜面側に転倒しないように注意。鎖等はほとんどなく、慎重に歩を進めることが肝心です。この辺りで怖いと思ったら独標には行かずに引き返すのが賢明でしょう。
西穂独標直下です。雪が少ない・・・。とても少なくて驚きます。
まずは飛騨側にとラバース気味に登り、そこから岩を登りながら直下の雪の道下まで到達します。
独標直下まで登ってきました。左手の方はクライムダウン中。ただ、この日の雪の状況は登りも下りも前向きで普通に進めました。
登り切って振り返ります。上から見るとかなりの傾斜。残雪期にもなると綺麗にステップが出来てくるのですが、まだそこまではなっていませんでした。
まずは西穂独標でポーズ。ここから山頂まで11の峰が連なります。
独標からピラミッドピーク方面。
左手から2つ目の頂が西穂高岳山頂。右手はジャンダルム、奥穂方面。
来た道を振りかえって。
360度大絶景です。
独標までで大よそ1時間30分ほど。ここまでのピストンでも十分に楽しめると思いますが、今回のメインはここからです。独標で写真を撮ってもらい、いざ西穂高岳へ進みます。
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