厳冬期・西穂高岳独標から山頂へ、岩と雪のミックスルートを歩いてきた ‖ テント泊(後編)

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2019年の登り始めとして、昨年と同様に西穂高岳へ行ってきました。

朝の光の中で登るのが好きなので、今回も極寒の中ながらテント泊。厳冬期のテント泊とはいえ、目の前には通年営業の西穂山荘があり、それ程過酷ではありません。北八ヶ岳の黒百合ヒュッテや南八ヶ岳の赤岳鉱泉、行者小屋などと並び、厳冬期の雪山でテント泊がしたい!という方には最良の選択の一つではないでしょうか。

前編では独標までの行程を書きました。後編では今回の山行のクライマックスとなる独標からピラミッドピークなどいくつもの険しい峰を越え、厳冬期の西穂高岳山頂へというところを書き残してみたいと思います。

西穂高岳独標から下りて登ってピラミッドピークへ

下の写真は独標から山頂方面を見て撮影した写真です。左から2番目のピークが2909ⅿ、西穂高岳山頂。「11峰」とされている独標からは10のピークを越えて行くということになるのでしょうか。

直線距離にすると目と鼻の先という感じですが、ここから先は目の前の岩と雪に集中です。歩いたことのあるルートだとしても、雪の付き方一つで全く違う難易度になりますからね。ましてや今年は雪が少なく、岩が出ているだけに逆にアイゼンを引っかけないように注意して進みました。

さらに、この日は風も強く、前日雪が降ったこともありトレースは数分で消えることもありました。一本道だから迷いようがないように思えますが、実際に数人がルートを見誤って登らなくてもいいようなリッジに登り、下りるのに緊張を要するような場面も見ました。登るのかトラバースするのか、ルートファインディングの技術も磨かないといけないのだなと改めて感じました。

ちなみに、写真の左のルート上に人が見えます。まずは独標を下り、再度雪の壁を登り返します。

雪の付き方が中途半端で岩が露出する独標直下の下り

後から撮った写真ですが、独標から山頂側の下りを覗き込んだ写真です。

独標側から見下ろした写真。

独標からの下りをピラミッドピーク側から見た写真。アップしてみます。

足場やマーキングがまだハッキリと見えます。見えるから容易という意味ではありません。

独標直下の下りは、独標への登りに比べても傾斜が急で、岩に着いた雪もそのまま剥がれて一緒に落ちてしまうんではないかと感じるようなことがあるため、緊張を強いられます。今回は雪の量が少なく、アイゼンを引っかけないように気を使いました。

独標から先に雪の壁が何か所かありますが、今回は前日の雪がモフモフで足場が悪く、崩れながら登り、崩れながら下りました。一か所はクライムダウンで。クライムダウンしながらもピックがズルズル滑り落ちるという・・・。雪はまだ締まっていませんでした。

ピラミッドピーク到着

独標から20分ほどでピラミッドピーク到着です。山頂も随分近づいてきました。ここまで来ると後戻りするのが勿体ないと感じてきます。ただ、コンディションや天候に注意しながら判断ですね。朝方吹き続けていた強い風も随分おさまり、高曇りになりつつありましたが、何とか持ちそうです。

振り返ると独標からの標高差はそれほどないのですが、景色は随分違って見えます。ここまでこないと見られない景色。そうやって誘い込まれるんですよね山って(笑)

霞沢岳と上高地。壁のように巨大な山です。

さあ先へ行きましょう。

いくつもの峰を越え、厳冬期の西穂高岳山頂へ

ピラミッドピークからはまた急な斜面を下ります。

何と言うこともない雪稜を信州側に下りていくのですが、信州側は真っ白な断崖。滑り落ちないように常に慎重に。

写真右手にググっと下りて、雪のブリッジのような場所を通過します。

夏場でもちょっと嫌な下りながら岩を通過する場所で肝を冷やす場面も

この先、写真は撮らなかったのですが、目の前を行くパーティーの一人が下りで若干足を滑らせました。咄嗟に出た手が岩にかかって難を逃れましたが、緊張する瞬間でした。さらにその後に行った私も同じ場所で手にかけた重さ100kg以上はあろうかと思われる岩がグラッと動き肝を冷やす場面が。あのまま落ちていたらと思うとゾッとします。

信州側は雪庇がこれからどんどん成長するでしょう。基本は飛騨側を行きますが、独標までと同様に少し長めのトラバースが続きます。この辺りは強い風に吹かれて当日は雪が締まっていました。滑落の恐れもあるので慎重に。ピッケルの先は右手の斜面に全く刺さらず、安定したアイゼン歩行が求められるのでしょうね。夏場だと渋滞するような場所。厳冬期の西穂では本当に静かな歩きが続きます。

ピラミッドピークを出てから40分ほど。いよいよ山頂直下へ到着。この日は信州側に向けてルンゼを直登します。写真右手の岩の溝の部分ですね。雪は中途半端に崩れており、ピッケルはおまけ程度。出来るだけアイゼンで雪を掴んで一気に登ります。およそ15mほどを直登すれば目の前には山頂へのビクトリーロードが続いています。

2019年1月6日 午前9時51分、標高2909m西穂高岳山頂です。お疲れさまでした。

奥には穂先だけ黒い槍ヶ岳も見えます。

 

雲海の向こうには富士山も。

そして何と言っても山頂の先に延びる奥穂高岳へ続く雪稜。この先はどんな世界が待っているのでしょう。行きませんが。

独標で一緒だった方も登ってきます。

 

山頂からの景色はどこもかしこも絶景でした。

この日山頂ではほぼ無風に近い状態。同時に登ってきた方達と喜びあい、写真を撮り合いながら15分ほどいたでしょうか。こんな天候に恵まれた日に登れたことに感謝です。

下山、テント撤収、そしてご褒美の無人温泉へ

そうこうしているうちにどんどん空が白くなってきました。ヤマテンによると天候は午後に向けて崩れて来る予報。山頂に集まった5人で一斉に下山です。

山頂直下のルンゼは雪の状態が良くも悪くもなかったのですが、足場が定まらなかったために念のために途中までクライムダウン。

登りの際に肝を冷やした場所は少し迂回しながら通過しました。

独標まで戻ってくると、山荘方面に雲が流れ込んでいます。

独標直下、山荘方面への下り。下りは普通に前向きに下ることが出来ました。

雲の量がどんどん増えています。

約1時間30分ほどで山荘へ到着。テン場には一緒に登っていた2人組の方と私の2つのテントしか残っていませんでした。

撤収と同時に雪が強まって来る

休む間もなく撤収です。テントを固定したイーストンのペグ「ゴールド24」。いつも思いますが、スポスポッと簡単に抜けてくれるので助かります。

 

在庫のあるうちに買っておくのが得策です。一本900円。今回は6本使いました。

撤収と同時に雪が急に強まってきました。すでに山頂方面は真っ白。やはりこの時期の天候は安定しません。

撤収しながら吹き込んでくる雪の結晶の綺麗さに見入ったりして。


山荘のスタッフの方にお礼を言って、最後に西穂カレーをいただいて下山の途に。

西穂山荘からロープウェイの駅までは下りだと30分ほどでしょうか。来た時と同じくモフモフの雪の中を楽しく下山。真っ白な雪の上に付いていたのはウサギかな?足跡があちこちにありました。動物は寒くないのでしょうか。

観光客向け雪の「千石園地」にも難所があった!

この看板までくれば残りわずか。ロープウェイ駅付近の千石園地に到着です。

家族連れや外国人観光客の方が楽しそうに雪の中で遊んでいました。いやー寒そう(笑)

ここでプチ情報
千石園地出口直後にある若干の傾斜。雪の回廊まで向かう入り口だと思いますが、このわずかな傾斜が観光の方にとっては最大の難所です。右の方は手すりにつかまりながら。左手の子どもさんは手を掴んでもらいながら下りていました。思い切ってビニール袋か何かを持って行って尻セードしてしまう方がいいかもしれません。登りはツルツルで大変なことになるかもしれませんが。もちろん私はアイゼンなので何事もなく・・・。

帰りは以前から気になっていた無人の温泉「栃尾温泉 荒神(こうじん)の湯」へ

山の帰りには温泉に入りたくなるものです。特にこの時期は冷えて縮こまった身体を開放してくれる温泉に少しでも早く入りたくなるもの。

新穂高の近くには無数の温泉があり、これまでもいくつか紹介してきましたが、今回はまだ訪れたことのない栃尾温泉界隈へ。平湯と新穂高の間にあるひっそりとした温泉地「栃尾温泉」。

いつもは横目に見ながら通過してしまうのですが、今回はこちらの共同露天風呂「荒神(こうじん)の湯」へ向かいました。

先ほどの看板が見えた場所から道路脇の駐車場へ。

車は一台だけ。駐車場の目の前には綺麗な公衆トイレもあります。看板にはオートキャンプ禁止とありますが、確かに露天風呂とトイレがあれば車中泊やキャンプをしたくなるのもわかります。しかし、近隣の迷惑になると思われますので守らないといけませんね。

受付も何もなく、料金は志(200円程度)を入り口のポストに投げ入れるだけ。時間は朝の8時から夜の10時までとのこと。10時を過ぎると灯りが一斉に落ちるそうです。

屋外が脱がないといけないかなと覚悟していましたが、立派な脱衣所がありました。

吹きっさらしよりもずっとマシです。もちろん氷点下だったと思いますが、急いで服を脱ぎ温泉へ。

かなり熱い!源泉かけ流しなのかなと思いますが、それにしても熱い!夏場は入れないかもしれない。しかしその熱さが疲れた身体をほぐしてくれます。気持ちいい。

料金の安さといいロケーションといい、新穂高方面に来たらここは外せなくなりそうです。ちなみに洗い場等はありませんでした。

厳冬期西穂高岳テント泊まとめ

昨年に続き、新年早々の西穂高岳テント泊。序盤の荒れ模様の天候は昨年と同様で、「今年はどうなるか?」と不安もありましたが、2日目は絶好の登山チャンスが訪れてくれました。厳冬期の西穂高岳と言っても毎年状況は変わり、難易度も違ってくると思いますが、新年一番の登り始めとしていい経験が出来たと思います。

この時期のテント泊は寒さとの闘いではありますが、そこがまた工夫のしどころもあり、経験を積むチャンスでもあり楽しいところです。間違いなく昨年に比べて快適に過ごせました。また、前日入り出来ることで美しい光の中で登ることが出来るなどメリットもいっぱいです。

残雪期にもう一度チャンスがあればと思っていますがどうでしょうか。今回も行かせてくれた家族に感謝です。

 

 

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