謎のマイナーランプ 本物?偽物?E.Thomas&Williams?入手

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最終更新日 2023-12-05先日紹介したパズーのランプことイギリスE.ThomasWilliams社製マイナーランプ(鉱夫のランプ)。

今回は同じくマイナーランプですが、謎の個体を手に入れたので紹介したいと思います。

単に個体識別が出来る知識がないだけだったりしますが、全体が金色に輝く贈答品として流通するマイナーランプとは全く違った、そのゴツゴツした無骨な雰囲気が妙に気に入っています。

坑内安全灯として日本の炭鉱でも使われていた”マイナーランプ”

謎のランプを紹介する前にちょっと前置きです。

ユネスコ世界記憶遺産にも登場する

マイナーランプは日本の炭鉱でも作られ使われていました。日本で初めてユネスコ世界記憶遺産に登録された福岡県の炭鉱労働を描いた山本作兵衛氏の残した記録画にも多くのマイナーランプ=坑内安全灯が登場します。

山本山本作兵衛 炭鉱記録画・記録文書

今回改めて興味を持ち記録画を見させていただきましたが、マイナーランプの存在も時々書き記されていました。

「昔も今も安全灯は三〇度位傾くと火は消え、硝子は割れる(亀裂)するのであった。明治時代A系のヤマはガラス破損料として金十銭也をひかれていた。又安全灯の使用料として一個に三銭、後には五銭の油札をヤマの売店で買求め 入坑の際 札と引換えに借るのであった。」
山本作兵衛氏 炭鉱記録画より

ランプも燃料も鉱夫が自己負担だったんですね。ランプの機能性だけでなくどのような使われた方をしていたのかも知れて興味深いです。

謎のマイナーランプを見てみる

ウェールズ南部アバーデアで創業したE.Thomas&Williams

1860年からランプを作り始めたE.ThomasWilliamsですが、当時イギリス各地には多くの炭鉱があり、当然ランプを作る工房も各地に多くあったそうです。その中でもイギリス政府から安全性の高さが特に評価されていたのがエヴァン・トーマスの作ったマイナーランプ。同じくランプ製作に長けていたルイス・N・ウイリアムズと創業したのがE.Thomas & Williams Ltdということらしいです。

創業の地はウェールズ南部の町 アバーデア。もちろん炭鉱の街だったようです。この町の名前は現在も贈答品として製造流通するE.ThomasWilliamsのランププレートにも刻印があります。

白い枠で囲まれた部分にABERDARE(アバーデア)と刻印が入っています。

謎のランプにもプレートが付いています。そしてそこには手打ちで打たれたような「Thomas&Williams」と「ABERDARE」の刻印があります。

しかし随分雰囲気の違うプレートです。初期の頃の?と思えたり、後らか付けたんじゃない?と思えなくないような(笑)。

ロック機構が残っている

本体とランプ部分はねじ込み式で回転させると外れるようになっていますが、実際に炭鉱内で使われていた頃にはロック機構の装着が政府から義務化されていた時期(1800年代後半)があるそうです。誤って外れて爆発が起きることを防ぐためなど諸説あるようですが、鉱夫がタバコを吸うための火をえようと開閉してしまい、炭鉱内のガスに引火爆発することを防ぐためというのが何だかありそうな理由ですね。

ロック機構には様々な仕組みが導入されましたが、今回入手したものには原始的な南京錠などを差し込めるような機構が残されています。また周囲の傷後も古いものであることを感じさせます。

持ち手の形状が違う・燃焼中も持てる

上から見てみると一目瞭然ですが、持ち手の形状が全く違います。贈答品として製造されているものは丸形、今回入手したものは手に持ちやすい楕円形の形になっています。

持ち手には形だけではない大きな違いもありました。燃焼テストをした際、現行品はしばらくすると持ち手も高熱になって触ることが不可能になってしまいます。一方楕円形の持ち手の方は何時間燃焼させていても普通に触って持ち上げることが出来ました。実際に炭鉱内で使う時に持てなくなってしまっては意味がありませんから、もしかしたら実際に使われていたものなのか・・・?

大きさと素材

何と言っても最も違いがあるのはその全体的な見た目。現行品は全長26cmほどですが、今回入手したものは23cmほど。直径も8.5cmほどと一回り小さくなっています。

さらにホヤの上部が鉄でできているのも大きな違い。一般的には炭鉱内で何かにぶつかった拍子に火花が散らないように真鍮製にしたと言われていますが、ぶつかりやすい部分は真鍮製にしつつ、その他は鉄製にしたとも見える・・・。

分解

各部は綺麗に分解できます。実は燃料タンク下部に若干の損傷があったのですが、金属パテで補修することで燃料漏れも起こしていません。

タンクを開けてみると千切れた大変古そうな芯が出てきました。芯を上下させる機構も問題ありません。防爆装置としての金属メッシュはとても綺麗なものでした。

点灯

いよいよ点灯。パラフィンオイルがしみ込んだことを見計らって火をつけ、上部を装着します。オイルランプとしては手間がそれなりにかかりますがその行為がまた面白い。明るさはロウソク程度ですが、独特の雰囲気があります。

取り寄せるまで本当に点灯するのか少し不安だったのですが、無事に使えることが分かってホッとしました。

結論 本物でも偽物でもかまわないと感じられる魅力がある

結論としてはE.Thomas&Williams社製のものなのか、本物か偽物かなど全く分かりませんでした。自分なりにも色々調べたのですがあまり情報がありません。

そもそもマイナーランプの何を本物とするのかも難しい。現在作られているマイナーランプも実際にはレプリカ。当時と同じように炭鉱内で安全を確保するために使えるかというとそのような機能は省かれています。先にも書いたように当時ウェールズ各地には多くのランプ工房があったわけですから、E.Thomas&Williams社製のものだけが本物というのも違います。

実際に今回入手したものを触っていると、そこにはとても魅力のある造形があり、点灯するととても優しい光を与えてくれました。それでいいと思います。あわよくば、100年なのか80年なのか前の時代にどこかの炭鉱内で実際に使われていたものであるのなら・・・日本ではないかもしれないけれど山本作兵衛さんのような労働者が使っていたものであるのなら・・・その姿や思いを想像しながら大切に使っていきたいと思います。

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