3時間半頑張れば北アルプスの大パノラマが目の前に!小屋締め直前、冬の燕岳へテント泊登山
最終更新日 2023-12-052018年11月末、冬本番を前にして燕岳山頂近くに建つ「燕山荘」の今年の小屋締めが行われました。そんな小屋締め直前の11月24日‐25日、テントを背負ってノンビリテント泊登山をしてきました。
強い寒気の入り込んだ11月の3連休。冬の始まった北アルプスの大パノラマと絶景に圧倒されました。
目次【お好きなところから】
決して行けない場所ではないアルプスの山々
登山をされない方に「アルプスに登る」なんて言う話をすると、「ガチですね」なんて反応をいただいたりします。
どんな山があるかは分からなくても、「北アルプス」「南アルプス」「中央アルプス」などという言葉からは、「一生行くことがない場所」というイメージを抱きながらも、万人を惹きつける魔力のようなものがあるから不思議です。
実際にはアルプスの一般縦走路などはとても整備され、もしかすると名も知られぬ低山の方が登るのが難しい場合もあるのではないかと感じます。
アルプスは決して閉ざされた世界ではなく、誰もが少し頑張れば、とても素晴らしい日本の山の魅力を実感できるそんな場所だと思います。
もちろんアルプスと名前の付く山域にも様々な難易度のルートがあり、季節によってもそれは大きく変わるわけです。決して甘く見てはいけないし、記事のタイトルにした「3時間半」というのも、登山の経験や体力、季節やその時の気象状況などにより大きく変わるので、あくまで「例えば」ということになるのですが。
参考:難易度などを数値化した山のグレーティング長野県公式HPへ
「アルプス登山」入門の山「燕岳」が人々を惹きつける理由とは?
そんなアルプスの山々の中でも、比較的手軽に楽しめる山、それが「燕岳」ではないでしょうか。北アルプスの女王とも呼ばれる秀麗な山容を誇る燕岳。登山初心者にも比較的容易に登れるこの山は、なぜこうも人々を惹きつけるのでしょう?
人々を惹きつける理由とは?と書きながら、答えはわかりません。でも何度目かの燕岳、改めて思い当たる点はありました。
日帰りも可能、比較的短時間で山頂まで辿り着ける魅力
一般的な登山口となる「中房温泉」から燕岳山頂までの登りコースタイムは4時間50分、下り3時間15分、合計約8時間(休憩含まず)と十分日帰り圏内の登山です。
私は今回テント泊装備を背負ってでしたが、登り3時間45分、下り2時間20分(どちらも休憩込み)。このぐらいの時間で楽しめるというのは非常に魅力です。
北アルプス三大急登と言われながらも、危険個所がない登山道の安心感
途中の登山道は合戦尾根と呼ばれる「急登」が存在します。アルプス三大急登と呼ばれる登りですが、それほど長くなく、岩場や鎖場もないため特別な技術も要しません。慎重に頑張れば多くの方が登れるという安心感は大きな魅力だろうと思います。
魅力的な合戦小屋や燕山荘の存在
登山口から合戦尾根を登り切り、山頂直下に建つ「燕山荘」。私は泊ったことはありませんが、登山者人気の山小屋です。
名物のケーキや生ビール。綺麗な小屋の作りは小屋泊初心者の方にも人気なのは分かります。
「アルプス」の名に相応しい絶景の数々
そして何と言っても日本二百名山、新日本百名山にも選ばれた「燕岳」の美しいい独特の白い山容や、そこから見渡せるアルプスの山々の美しい景色の魅力。
登山の魅力が詰まった山、アルプスの独特の山の美しさを前にして、「登山」にハマる要素タップリの燕岳。
そんな山の今回の記録を今日は書き残しておこうと思います。
小屋締め目前、冬の始まる燕岳へ
2018年冬、燕岳も他の山と同様に雪の便りがなかなか届かずにいました。
そんな11月後半の三連休、大陸からのこの時期としては強めの寒気の接近による待望の雪の知らせ。これは行くしかない!と家族に相談し。中学の期末テスト直前であったみーのこともあり、1人での単独登山を許してもらいました。いつもいつもありがとう。
23日の金曜日は勤労感謝の祝日。この日、遅れていたみぃ君の七五三のお祝に近所の神社へ。
長男みーが小学校入学の時に着た衣装がピッタリ。再来年には新しく買い替えないといけないかもしれません。大きくなったな~とシミジミ感じます。
千歳飴を買ってもらい、ご機嫌なみぃ君と夕方帰宅し、そのまま登山ウェアに着替えていざ出発しました。
登山口「中房温泉」で車中泊
中央道、長野道を通り安曇野から下道を走ること1時間ほど。途中いつものコンビニで夜食や翌朝の食事を買い込み、クネクネした細い林道を通り登山口となる「中房温泉」に到着したのは午後10時過ぎ。
この時点で気温は氷点下3度。予報通りの冷え込みです。買い込んだビールを飲みながらシュラフに体を潜り込ませ、エクストレイルの運転席でそのまま車中泊に入りました。
車の駐車場所確保がポイント四季を通じて人気の山である「燕岳」。中房温泉のすぐ下には数か所の登山者用無料駐車場があり、かなりの数の車が停められますが、小屋締め直前のこの時期、夜の10時でも残りは数台でした。止められない場合は麓の臨時駐車場からバスやタクシーで向かうことに。
狭いエクストレイルでは身体が痛く、夜中何度も起きながらも何とか5時間ほどの睡眠はとれました。
午前6時過ぎに出発、第二ベンチ付近から雪
登山口にある立派なトイレで用を済ませいざ出発。歩き始めてまもなくして日の出の時間。
この日もファイントラックのフロウラップフーディーを着っぱなし。冷え込むスタート時点から、登り始めて熱くなっても、稜線に出て冷たい風に当たっても、この一枚を着っぱなしで歩き続けられるというのは本当に重宝する一枚です。
雪と言ってもアイゼンが必要なほどではなく、定期的に出てくる「ベンチ」も第一、第二ともにスルー。
第二ベンチ。この辺りから前日降った雪が増え始めました。太陽が上がっても気温は低いままなので溶けてグチャグチャになることもなく、11月初めの笠ヶ岳に続いて雪の感触を楽しみました。
第三ベンチで5分ほど休憩。
この「ベンチ」は本当にうまい具合に「ちょっと休みたいな」と思う頃に現れます。登山初心者の方でも各ベンチでしっかり体調を整えながら着実に進んでいけばいいと思います。
スタートから2時間20分ほどで合戦小屋に到着。
この合戦小屋、夏には「スイカ」が有名ですが、私が登るのはいつも冬とか残雪期。スイカにお目にかかったことがありません。とてつもなく美味しいと言われるスイカをいつか食べてみたいものです。
空は雲一つない快晴!風もそれほど強くなく気持ちいい。ここで持参していたオニギリなどで栄養補給。この先少し歩くと燕山荘へ続く尾根歩き、最後の登りが待っています。
夏道から冬道へ付け替え済み~見えてからが遠い燕山荘
合戦小屋で十分休憩を取り、それまでの樹林帯とは違い視界の開けた登山道を「合戦の頭」というポイントに向けて登ります。ふと見ると目の前に槍ヶ岳の穂先。雪も見えます。
すぐ目の前にあるのではないかという感覚に陥るほど近い。
背後には安曇野の町とずっと先には富士山も。
運がいいと一面の雲海を眺めることの出来るスポットですが、この日は雲海はあまり。それでもこの季節特有の澄んだ空気が遠くの山まで見渡せました。スッと立つ富士山綺麗ですよね。
20分かからず合戦の頭へ到着。もう燕山荘まであと僅か、目視でも確認出来るところまで来ました。
もう最後、この日は燕山荘のテン場でゴロゴロノンビリしようと思っていたので、本当にあと僅かなのですが、山小屋は見えてからが遠いというのは何かの法則でしょうか?遠い。
右手側にはこんな景色。奥は・・・爺が岳とか??
登ってきた道を振りかえるとこんな感じ。途中、前日23日に登っていた宿泊登山者の方とも随分すれ違いました。前日はかなり冷えたようで、氷点下10度を下回っていたとか。それでもテン場は混雑したとか。この日も場所が確保出来るか若干心配になりながら登りました。
燕岳のテン場燕岳のテン場は多と比べてもあまり広くなく、30張りも張ればいっぱい。基本は早いもの勝ち。張れなければ小屋泊に切り替えないといけないため、競争の激しい夏場はどうしても躊躇してしまいます。
雪が積もったことから、雪崩や滑落の危険性が高まる「夏道」は閉鎖され、尾根上を歩く「冬道」へ登山道の切り替えが行われていました。
そして出発から3時間半、この日の目的地「燕山荘」へ到着。テン場は十分空いています。
燕山荘前から北アルプスの山々の眺め。夏場もいいでしょうが、やはり白い雪に化粧された山・・・美しい(笑)
山頂行く気なし、テントでゴロゴロ、燕山荘でビールとお昼ご飯
まずはなかなか到着しなかった燕山荘へテン泊の申し込み。料金は800円。水は1リットル200円で分けてもらえます。トイレはテン場にもありますが、この時期は小屋のトイレ使用となります。
写真左端のオレンジが私のテント、ファイントラック「カミナドーム1」です。軽量でコンパクトに収納出来るので大変気に入っています。山のテントは今のところ他には考えていません。
設営をしていたら急に雲が出てきて若干雪もハラハラと。基本とても冷えています。念のためイーストンの雪山用ペグも持参しましたが、地面はカチコチに凍っていますが、雪はそれほど積もっておらず使用せず。転がっていた石でテントを固定しました。
お昼ご飯は登る前から燕山荘でいただくことに決めていました。小屋の開いている雪山って嬉しい。最大限資源は活用します!そしてビールもね。カレー800円?ビール700円?ぐらいだったような・・・。
雲が出て風も強まってきたこともあり、山頂はパス。もともと今回は行かなくてもいいかなと思っていたのですが、まあそういう登山もいいんじゃないかなと最近思います。
食事を終えて小屋を出ると、再度燕岳が綺麗に姿を見せてくれました。それにしても雪が少ないですね。
さて、心地よい登りの疲れ、満たされたお腹、ヌクヌクしたシュラフの中に潜り込めば・・・気持ちいい昼寝の時間です。
初冬の北アルプスの夕暮れを撮る
気持ちよく寝ているとあっという間に2時間ぐらい経ってしまっていました。
夕暮れまではまだ少し時間がありましたが、カメラを持って外に出ました。気温が一気に低下してきました。
雲が綺麗に燃えてくれるかもしれません。テントは随分増えていました。今回カミナドームが3張りもあってちょっと嬉しかったです。
燕山荘の前にいる「山男」のオブジェ。不思議な表情をしていてみんなに愛されています。
大天井方面から歩いて来た人達がいました。もう一泊出来れば冬の表銀座縦走路を歩きたかったですね。
槍ヶ岳方面の稜線に日が落ちていき
燕岳の西側斜面も赤く染まりました。小屋に泊まっている登山者も大勢外に出て、同じ時間を過ごしました。
足も手の先もジリジリと痛くなり、稜線に日が落ちるのを待ってテントへ。フリーズドライの食事を食べてからすぐに寝ていきました。夜、突然の強い風、深々と降る雪がテントを滑り落ちる音などで何度か起きましたが、ナンガのUDDBAG810DXのお陰でヌクヌクと眠ることが出来ました。
北アルプスの朝を撮る
翌朝5時、トイレに起きたついでに夜明け前のテン場と燕岳を一枚。三脚を持っていけば良かったと後悔・・・。空には分厚い雲が広がっています。
テントに戻り朝食のために水を温めようと思ったところ、凍らないようにマットにおいていたプラティパス内の水がカチカチに。寒い夜だったのですね。仕方なく降ったばかりの雪を集めて水作り。何とかカップラーメンを食べて外に出てみるとすでに東の空と山の間がオレンジに染まってきています。
こちら手持ち2.5秒。絞りF4で何とか手振れ補正抜群のOLYMPUS機で撮影。
それにしても寒い。昨日の夕暮れ以上に風が強く、ものの数分で手が千切れそうに痛い。
すでに燕山荘からは暖かい光がこぼれてきて薄っすらと積もった玄関前の雪を明るく照らしていました。ご来光を見ようと前日以上に多くの人が出てきます。
日の出前、日本で最も有名で人気のある縦走路であろう表銀座縦走路。大天井岳へ向かうこの道も雪に閉ざされようとしていました。その暗く緊張した姿も美しいこと。
最大ズームで富士山。「年賀状みたいな富士山だね」と皆さんの口から次々声が。みんな寒くて痛いのだけれど離れられず、その一瞬を待っています。
独特の鳴き声が近くからしたかと思うと、小屋のすぐ下の藪の中で雷鳥のつがいが木の実をついばんでいました。ご来光待ちの人々による緊急雷鳥撮影会に。
そして、ようやく待ち望んだご来光の時。
縦走路も赤く燃え
テン場も赤く
少しするとオレンジの光が燕岳を照らしました。小屋締め直前にこの景色を見に登ってこれたことに感謝。
改めて一晩の我が家。今年は冬張りを買おうかどうしようかと悩んでいます。案外暖かいのですがこのままでも。テント内ばバキバキに凍っていました。
下山
その後、ゆっくりとテント内の荷物を片付け、ノンビリノンビリ8時過ぎに撤収。縦走だと5時間前に出発していないとですね(笑)こんなユッタリなテント泊登山もたまにはいいものだなと。お世話になった山荘の方に挨拶し、下山開始です。
2日目は槍ヶ岳方面の雲が取れず、その姿は最後まで見ることが出来ませんでした。これでまたリベンジの口実が出来ました。次は槍が朝焼けに燃えるところをこの縦走路の途中から見なければと。
冬道にも前日よりも雪がモフモフと。下山時はほぼ最後までツルツル道が続き、第三ベンチでアイゼンを外した私は何度もツルッと滑りそうになりながらも、10時30分前に下山完了。
登山口にある秘湯「中房温泉」で汗を流し、名古屋への帰路に着きました。
冬の燕岳登山まとめ
燕岳は北アルプス初心者向けの登山コースとして知られた山。美しい絶景を比較的気軽に楽しめる山。あらためてそのことを実感する山旅となりました。
同時に、雪が少ないと言ってもそこはやはり冬のアルプス。急な天候の急変などで何があるかわからない冬山へ変貌します。最低限アイゼンの準備は怠ることのないようにしないといけませんね。
前爪が必要か軽アイゼンやチェーンスパイクで十分なのかは現地で確認しないとわからないことがありますが、前爪だと引っかけての転倒リスクは高まります。アイゼンの装着や事前歩行練習も余念なくと言ったところでしょうか。
燕岳では年末年始のお正月登山も盛ん。今年も年末に再度短期間の小屋明け営業が行われます。いつかその時にも登ってみたいですね。
装備
装備一覧は作っていませんが、事前に何枚か写真だけは撮っていたので上げておきます。
バラクラバは薄手のもの。気温低下の予報が出ていたのでグローブは4種類準備しました。これ以外にもテント設営用に防寒テムレスも。
マットは海外から取り寄せた新装備のエクスペド「ダウンマットウインターライトM」。マイナス32度対応は言葉だけではありませんでした。またレビューを書きます。
自作道具類とasobitogearさんのペグ袋。
行動食袋は改良版です。
マックパック「フィヨルド40」にパッキング。asobitogearさんに作ってもらった保温性の高い冬用サコッシュ。こちらもレビューしないと。
カメラレンズ
今回使用したレンズはこちら。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO。
とても扱い易いいいレンズだと改めて実感。これからの登山カメラレンズのメインですね。
初冬の燕岳テント泊登山、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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