陣馬形山キャンプ場/求める全てはここにあった/新しくなった「天空のキャンプ場」へ行ってきた

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最終更新日 2023-12-05無料から有料への転換は大きな決断、とても難しい選択だっただろうと想像します。

「天空のキャンプ場」とも呼ばれ人気だった長野県中川村の陣馬形山キャンプ場が2021年4月から有料化へ。

どのように変わったのか、新しくなった陣馬形山キャンプ場へ行ってきました。

陣馬形山キャンプ場 HP

「質の高いキャンプ体験を」価値を取り戻した陣馬形山キャンプ場

陣馬形山キャンプ場は7年前の記憶そのままで出迎えてくれました。

中川村から見た棚田と中央アルプス。

キャンプ宿泊者用駐車場より

キャンプとして最後に訪れた2014年の9月27日、実は御嶽山の爆発的噴火が起こったその日でした。

陣馬形山キャンプ場から御嶽山は見えないものの、テントにも薄っすら灰が積もった事を覚えています。しかし、その日、噴火以上に脳裏に焼き付くある出来事がありました。

すでに人気のキャンプ場となっていた当地。一番で到着してノンビリしていると、時間とともに次々とテントが増えていきました。夕刻にはひしめく様にテントやタープが張られ通路も塞がるような状態に。いつものように子連れで訪れていたのですが、辺りが暗くなったころ、離れたテントの男性から「子どもを連れてくるな!」と怒鳴られたのです。騒いでいたわけではないのに・・・。それ以来何となく足が遠のいてしまいました。

その数年前まで当地は貸し切りのような状態でした。ある朝到着してみると一人のお年寄りが濃い霧の中でラジオ体操中!終わるとカブに乗って下山していかれました。地元の方だったのでしょうね。残ったのは私達だけで貸し切りとなったこともありました。「人知れず」人気のキャンプ場・野営地だったのだろうと思います。

子連れで訪れても見知らぬ人がサッカーの相手をしてくれたり(テントがほとんど張られていない頃だったので)、初めましての方と焚き火をともにし、素晴らしい眼下の夜景を無言で見つめたこともありました。広くない山頂直下のその場所は厳しい自然とは裏腹の、集まる人々の温か味を感じる場所でもあったのです。

「キャンプブーム」は決して否定しません。メリットの方が大きいから。もっともっと浸透していって欲しいと願っています。しかしブームとともに知れ渡るようになった陣馬形山キャンプ場は、「無料」ゆえの「キャパオーバー」であった事は間違いありません。

「行ってきた!」とスタンプカードに判を押すように一度は訪れはするものの、「絶景だったけど激込みだった!」と呟いて、再度訪問することはない場所になってしまっていたかもしれません。あのままでは。

陣馬形山キャンプ場の最大の価値は何だったのでしょう。

中央アルプスと南アルプスに挟まれた日本で最も大きな谷とも言われる伊那谷を一望するその景観は「天空のキャンプ場」と言われ、雲と同じ高さでキャンプをすることが出来る絶好のロケーションであったことはもちろん大きな魅力であり、最大の価値です。これはどんなに人が集まっても変わる事はないことでした。

森サイトと中央アルプス

しかし今回訪問して驚いたのは、ずっと以前にこの場で感じた静寂と訪れる人々の余裕が取り戻されていることでした。

知る人ぞ知る天空のキャンプ場は、風と鳥のさえずりだけが聞こえてくる静寂に、日常から離れてどっぷりと浸かれることが出来るかけがえのない場所であり、その雰囲気こそ大きな魅力であり価値だったのだと。

この事を成し遂げたのは、有料化と利用組数の制限によることはもちろんです。しかし、オーバーツーリズムに心を痛め、この地の価値を知り、この地を利用するキャンパーに質の高いキャンプ体験を提供するために何をするべきなのか理解した人々が、「単なる有料化」ではない措置に踏み切り、この場所の価値を取り戻し、最大化しようとメッセージを発信された。素晴らしい決断をされたと思います。

到着時に1枚の紙を渡され、説明を受けました。そこにはこんな呼びかけがありました。

4つの「こころもち」

1.美しい自然の中で、美しく行動しよう。
2.刻々と変化し、時に荒ぶる自然から身を守れるよう、常に備えよう。
3.限りあるスペースだから、お互いに思い合って使おう。
4.環境、地域への負荷をなくし、この素晴らしい場所を守っていこう。
【陣馬形キャンパーズガイドより抜粋】

陣馬形山キャンプ場に静寂が戻ってきました。それはこの地の魅力をより深く感じることの出来る土台となっているのだと再認識しました。

変わり始めた陣馬形山キャンプ場/旅するキャンプの基点として地域とキャンパーを繋ぐ役割に期待

有料化によって変わり始めたのは他にも。

登山の避難小屋であった陣馬形山荘はレストハウスとして生まれ変わっていました。

素敵な音楽が流れ、味わいのあるランプが出迎えてくれます。中川村のコーヒーショップ「カフェセラード」の焙煎珈琲が150円(マイカップ持参の場合)でいただけます。

近いうちに知る人ぞ知るイエルカ薪ストーブが備え付けられ、キャンパー同士の交流の場となっていくことも考えられているとのこと。今回たまたまイエルカさんも陣馬形山に犬の散歩で来られておりお話をお聞きしました。

薪の販売が始まったのは嬉しい変化です。薪の質も抜群です。

受付をされていたスタッフにお話しをお伺いする機会がありました。

このキャンプ場オープンに合わせて当地へ移り住んできたという方。元は建築を学び、八丈島や九州でも仕事をされていたとか。ある時飛行機の上から見た大きな谷に興味を持ち、調べてみるとここ「伊那谷」だったと。キャンプ場のスタッフをしながら、「ビール」作りをしたいという思いを持っていると聞きました。陣馬形山でクラフトビールが飲めたら・・・薪ストーブを囲みながら・・・最高だろうな!なんて。

もう一人、裸足を突き出しているのは当日の夜の小屋番を務められた島崎さん。地元で大工をしながら、週に1回泊まり込みをされているとか。

実は裸足で山を駆け回るという趣味も楽しまれており、当日も自作のワラーチを履かれていました。実は初めてのワークショップを中川村の月イチマーケット「つばめマーケット」にて近く開く予定だと聞いて早速予約してしまいました(笑)。

中川村 つばめマーケット

右はいつもお世話になっている四徳温泉キャンプ場の久保田さん。陣馬形山キャンプ場と四徳温泉はすぐ近く。今回久保田さんも陣馬形山キャンプ場の企画運営に携わることになりこの日もみえていました。3人の話を聞きながら、陣馬形山キャンプ場はまだまだ変わっていくことを感じ、楽しみになりました。

「旅するキャンプ」の起点となりうる陣馬形山キャンプ場

見知らぬ土地で見知らぬ人と出会うことはとても楽しく刺激的で、日々の活力に繋がります。

絶景と静寂の中につかってゆっくりした時間を堪能するのも陣馬形山キャンプの魅力だと思いますが、キャンプ場を基点としてその地を巡るのも私はとても好き。陣馬形山キャンプ場のHPには「村をめぐる」ページが設けられ、「日本で最も美しい村」連合に加盟する中川村の農家やお店、人々が紹介されています。

小屋に置かれた案内図

今回も蕎麦を2軒でいただき、米澤酒造、カフェセラードさんや野菜の直売所などにもお邪魔しました。本当に豊かな村です。名古屋に比べればあれもこれもないのかもしれませんが、何だか人のつながりが濃厚で生きている実感がします。訪れると栄養をもらっていつも帰っています。村の魅力はまだまだ無数にありそう。キャンプ場を基点にして地域とキャンパーがつながる動きが出来たらという試みにも期待です。

今回訪れたのは5月。ちょうど陣馬形山キャンプ所から見下ろす麓の田では水が張られ、稲の植え付け作業を待つばかりの時期でした。

眼下に広がる水鏡を見ながら、昼間は畑作業や果物の収穫を手伝わせていただき、夜は手伝った畑を見下ろしながらキャンプとか・・・やってみたいななんてちょっと妄想していました。陣馬形山キャンプ場を基点として、子どもも含めて様々な経験が出来るようなことが進んでくれたら楽しいだろうなと思いましたね。

地元の情報チラシも置いてあります

 

色々書いてしまいましたが、陣馬形山キャンプ場のこれからに期待です。

陣馬形山キャンプ場レポ

最後に今回のキャンプレポを少しだけ。

実は今回土日月の2泊3日を予定していましたが、悪天予報のため1泊に変更。そのまま帰るのも何なので、2泊目は四徳温泉キャンプ場の小さなコテージを利用させていただきました。そちらの様子は別記事にて。

今回利用したのは360(サンロクマル)場内の最も上段に位置する展望サイト。到着したのが遅かったので、中央アルプス寄りの好位置は既に5張りのテントが張られています。2列目にヒルバーグのナロ3GTと久しぶりにタトンカ2TCを張りました。

標高1400mの山の稜線上にあり、時には猛烈な風が吹くのも陣馬形山キャンプ場。装備は少なめがオススメですが、そこは経験値から判断して最低限過ぎない道具を持ち込みました。もちろん場内に車は持ち込めませんから、手持ちのカートで運びます。

設営・撤収時のみ小屋の横まで車を付けることが出来ますが、柵の隙間は狭めのため、小型のカートを持参するのが便利です。現地にも台車はありますが数は最小限です。

サンロクマルサイトから入り口側を見る。右の赤い屋根が受付を兼ねた山荘。左は綺麗になったトイレ棟。過去に経験したことのあるキャンプ場で最も綺麗なトイレでした。

以前は汲み取り式でしたね。

テントサイトから山頂まではすぐ。木道の階段が整備されていて、今回何回往復したことか。刻々と景色が変わるので。

階段を登り切って、左手に視線を送ると息を飲む景色が広がります。

天候は下り坂。東海地方は梅雨入りが発表された日と重なったこともあり、雲が多い天候でしたが、まだ残る山の雪の白さと麓の田の水鏡が美しく、飽きることのない景観です。

山頂には無料の望遠鏡も備えられており、みぃ君もあれやこれやと探しながら眺めていました。

千畳敷カールの小屋もハッキリ見えました。

サンロクマルサイトから一段下がった位置が「空」サイト。細長く奥行きはありませんが、風の影響も少し抑えられ、落ち着いた雰囲気のサイトです。

サンロクマルサイトは結構な段差があります。

その下は水場や灰捨て場のある共有広場。

捨てられるのは灰のみ。ゴミは全て持ち帰りです。水場の水は沢から引いて飲料可能。ただし、流れた水はそのまま土に浸透するようになっており、合成石鹸(界面活性剤含む)などの使用は厳禁です。アウトドアの洗い物スキルが問われます。

最下段が「森」サイト。階段状に整備された木道を降りながら荷物を運ぶ必要がありますが、最もプライベート感の高いサイト。木々に囲まれている分、景観が遮られることもありますが、伊那谷の夜景は見ることが出来そうです。

今回は水を出来るだけ使わず、水場を汚さない事を前提に、家で料理を仕込んできました。

最近我が家で流行っている煮込みスペアリブ。家で軽く炒めて自家製ダレとともにジップロックで持参。

残ったタレは翌日薄めてスープになります。

生姜を入れてあるので、見た目以上に香りが良くて美味しい。汚れ物も食べられるものにしてしまえば、洗い物も当然出ません。

炊飯の汚れは取りにくいので、ゆるキャン△好きなみぃ君のリクエストを受けて、ホットサンドメーカーで肉まんを焼いていただきます。

醤油を垂らして香ばしく、外パリパリ中ホカホカで美味しかったです。

陣馬形山キャンプ場をこれからも美しく維持し、地域に認めてもらい使い続けられる場所として残して行くためにも、キャンパーのスキルが問われるのもこの場所です。

ちなみに、今回のクーラーボックスはこちら。マウンテンダックスのソフトボックスの中にグラナイトギアのコンパクトクーラーボックスであるエアセルブロックスをイン。超コンパクトで軽量なクーラーシステムです。2日目夕方でも小さな保冷剤が凍っていましたよ。

日が落ちると流石に冷えてきました。と同時に日中吹いていた風も少し収まるもの。焚き火開始です。

 

梅雨前線から伸びる分厚い雲によって星空は残念でしたが、伊那谷の美しい夜景を堪能しました。

そうそう、夜の小屋内はランプの灯が美しい和みの空間になっていましたよ。寝る前にコーヒーを頂いちゃいました。

翌朝、テントを打つ雨音で目が覚めました。

まだ寝静まり、雨音だけが響く中、1人焚き火を開始。

陣馬形山キャンプ場では焚き火台の下に敷く難燃シート、強風に対応するための丈夫なペグなどを無料でレンタルできるそう。無料でというのが素晴らしいですよね。

コーヒー豆をコリコリ挽いて、焚き火で沸かしたお湯でドリップ。起き出してきたみぃ君と天気予報を確認しながらのんびりおしゃべり。前日の運動会がよっぽど楽しかったのか、声を落としながらも上級生の走る速さなど興奮しながら教えてくれました。考えてみたら1年生だった去年はコロナで運動会は学年別開催。2年生にして初めての運動会らしい運動会だったのですね。

雨が本降りになってくる中、午前7時過ぎには撤収。

絶景と静寂の「天空のキャンプ場」、陣馬形山キャンプ場。有料化に踏み切った事で、その価値を取り戻しつつあるキャンプ場。

人との出会い、地域との繋がりを体感、素晴らしい景観…キャンプに何を求めるかは人それぞれですが、私にとってこの陣馬形山キャンプ場は求める全てがある場所でした。

これからも末永く、地域の宝のこの場所が美しく保たれ、キャンパーからも地域の方々からも愛され進化していって欲しいと思っています。

陣馬形山キャンプ場

 

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