【北岳-光岳縦走】聖平小屋から美しくも長い稜線を歩き光岳・6泊7日テント泊南アルプス⑥

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最終更新日 2023-12-05

北岳から光岳まで歩く南アルプス縦走6日目。今日は最後の目的地である光岳に向けて歩きます。縦走予定の中でも最も楽しみにしていたこの区間。富士山を見ながらの美しい稜線歩きが楽しめると言われていますが、最後の最後でなかなか辛かった!光岳往復も含めた距離14.1km、コースタイム8時間17分の記録です。

2023年9月12日から18日、広河原から入山して北岳からいくつかの日本百名山を歩きながら光岳(てかりだけ)を目指す6泊7日のソロテント泊登山の記録です。山梨県・静岡県・長野県にまたがる広い南アルプスの山歩きを満喫してきました。

南アルプス縦走の概要

9月12日(火)名古屋発:電車、バスを乗り継いで登山口となる広河原へ14時前着。登山開始、白根御池小屋テン泊
9月13日(水)北岳、間ノ岳を経て熊の平小屋テント泊
9月14日(木)塩見岳に登り三伏峠、小河内岳避難小屋泊(無人)
9月15日(金)荒川中岳を経由して荒川小屋テント泊
9月16日(土)赤石岳に登り聖岳へ。聖平小屋テント泊
9月17日(日)上河内岳、茶臼岳を経て光岳小屋テント泊←今回の記事はこちら
9月18日(月)易老岳を経て易老渡、芝沢ゲートへ9時過ぎに下山

標準コースタイム/61時間46分
距離/79.9km
累積標高/登り-7,722m 下り-8,518m
ルート上の日本百名山-北岳、間ノ岳、塩見岳、荒川岳(断念)、赤石岳、聖岳、光岳
手元のデータでは約130kmの移動距離。歩数から計算するとそんな感じになるのでしょうね。

6泊7日の縦走計画を立てた理由

光岳には過去に日帰りで登った事があります。コロナ禍で小屋は閉まっており、11月という季節がら時折雪もパラパラと降るような寒い時でした。長い区間の途中ほとんど人と会うこともなく、芝沢ゲートからのピストンが試練過ぎて二度と行く事はないだろうと決めていた山でもありました。正直山頂からの展望もほぼないですしね。

ところが、山というものは不思議なものです。その辛かった日帰り登山の記憶が時折脳裏によぎるんですね。

あの辛さは日帰りだったからでなないのか(これは間違いない)、季節を変えれば素晴らしい景色を見る事ができるのではないかなど、どうにかしてもう一度行くための言い訳作りを考え始めるのです。

そうして考え出した言い訳が「違うルートから登ってみたらいいんじゃないか?」ということ。そう、今回の6泊7日の南アルプス縦走は全て光岳に行くためのものだったのです。何か忘れ物をしているような、そんな気がしていたのですが、もう一度登らなければその答えは見つからないと思って挑んだ縦走もいよいよ最後が近づいて来ました。

最後の目的地「光岳」へ

聖平小屋には前日の夕方かなり遅い時間になってもポツポツと到着する登山者がいました。南アルプスの南の要衝という印象を受けましたが、そんな事を考えながら、翌日のルートを確認していると、テントを打つ雨音がいつの間にか夢の世界へ誘ってくれていました。

目を覚ましたのは翌午前4時。外を見ると木々の間に開いた空に明るい星が輝いていました。雲もなく今日もいい天気になりそうです。前日に続いてあまり食欲はないものの、手持ちのパンを少し千切って口の中に詰め込み、コッヘルで沸かしたお湯でフリーズドライの味噌汁を作って飲むと少し力が湧いてくるようでした。

結露で濡れたテントをザックの一番上に押し込み、聖平小屋のテン場を出発したのは4時45分でした。

前日通った木道を歩き、突き当たりを右に行くと聖岳、左に行くと光岳へと続く稜線となります。

まずはコースタイム2時間半の上河内岳を目指します。

二百名山「上河内岳」へ

朝日に間に合うか!南岳まで

登り始めは樹林帯。すでに先行している登山者の気配を感じながら何となくノンビリと。ところが??途中の空の染まり具合にこれは!とペースアップしましたよ。ここは南アルプスの南の端に近い位置。富士山にも近いということですから。

聖平小屋から約300m標高を上げると地図上の「岩頭」という場所。ちょっとよくわからなかったのですが、恐らく2500mほどから樹林帯を抜け出します。

先行していた登山者の背中が見えました。どうやら振り返って北の方を見ている。まだ我慢我慢。そんな気持ちで振り返らずに登ります。風も無くまだ日の出前というのにすでに暑い!汗が帽子のツバから滴り落ちます。急ぎましたからね。

樹林帯を抜け出して暫く登ったあたりで恐らく東の空からは太陽が昇りました。我慢していた背中側の景色を見ようと振り返ると、昨日はガスガスで見えなかった聖岳の全容がしっかりと。山頂部はオレンジ色に燃えていました。前日のガスの切れ間の小赤石岳の風景も綺麗でしたが、どっしりとした南アルプスらしい聖岳が赤く染まる姿も美しかったですね。

しばらく東側を回り込みながら緩やかになった傾斜の中を進むと、目線の先にピークらしき姿が。恐らく左手側が「南岳」?とするとこのあたりが岩頭??写真だと急斜面にも見えますが、とても歩きやすいちょうどいい感じの登りです。

南岳への登りの最後。平坦になった場所から見ると、さっきまで大きかった聖岳ももう少し遠くに。左の肩に見えるのは兎岳か?

午前6時5分、南岳に到着。すっかり太陽も上がって朝日が眩しい。ゆっくりと思ってスタートしたのにに、ここからの富士山を見たくて、気がついたらコースタイムの6割程で上がって来ていました。ハイマツに囲まれた気持ちのいい山頂に腰を下ろし休息です。

南岳からの富士山。雲海にスッと浮かび上がるは文句なく綺麗ですね。南岳の山頂でかなりゆっくり休憩しました。まだまだここから長いですしね。

南岳から上河内岳は目と鼻の先

南岳での休憩を終え、朝日を受けて再度歩き始めます。次の目的地は日本二百名山の上河内岳。静岡県葵区と長野県飯田市の境界にある山だそうですが、赤石山脈の南部の主稜線の中では形の綺麗な山で目立ちます。

南岳から上河内岳まではコースタイムで33分と目と鼻の先。約100mほど標高を上げます。

まずは一旦下ります。光岳まで続く稜線は上がったり下がったり、思いの他きつい事を後々思い知ります。しかし、朝日を浴びながらとても気持ちがいい歩きです。

東側の斜面をトラバースするように進みます。ここ何気なく撮っていますが、左は結構落ちています。気を抜かないように丁寧に歩かないと。

疲れてくると振り返ってしまいます。流石に6日目ですからねペースは全く上がりません。まあユックリ堪能することとしていますが。これを見ると山脈というのが自分としてはとてもよく分かります。高い山がかたまっていますね。

そうこうしているうちに上河内岳の肩に到着。山頂へは主稜線を外れて少し登らないといけません。皆さん荷物を置いたり、中にはテントを干している方も。水気を切って少しでも軽くしたいですからね。

6時55分、日本二百名山「上河内岳」登頂です!標高は2803m、お疲れ様でした。バックに見えるのは聖岳。右手奥に見えるのは赤石岳??何でしょう?

富士山はもちろんのこと、360度の大絶景です!

光岳へ続く稜線がまだまだ長く続いていますね・・・もう既に疲れています。光岳に着いてやるぞという気力。そんな感じでした。上河内岳の山頂は細長く、大きな石に腰掛けてノンビリできる場所もあって気持ちが良かったです。周囲の景色も抜群でさすが二百名山と言ったところでしょうか。それにしても光岳まではまだまだアップダウンの連続であることが分かる景色!頑張らなければと気持ちを入れ替え、肩までの下りを一気に。

三百名山「茶臼岳」へ

上河内岳の肩まで下り、デポしていたザックを背負い直して主稜線へ復帰です。まずは少し岩尾根っぽい場所をしばらく下ります。向かいからは高齢の登山者グループが大きな声で喋りながら登ってくるのが分かります。私、この時はとても体調が良くなかったので羨ましかった事を覚えています。あんな風に元気に歳をとりたいと痛切に感じていました。

さあ次に目指すのは日本三百名山の茶臼岳です。上河内岳からは標高を200mほど下げながら山頂に至るというこで、全体的に下りながらの稜線歩きというのは気持ちがちょと楽になります。気持ちだけも軽くしないと!

上河内岳の肩から尾根を下ってしばらくいくと奇岩竹内門という場所へ。岩が門のようになっている場所を通過します。後から調べてみると、褶曲構造が岩面に見られるということ。地層に何らかの力が加わり曲がりくねった様子が手に取るように分かるといことですが、見落としました・・・。

さらに進むと森林限界以下に入り、ダケカンバの中を通り抜けて歩きます。その先には亀甲状土のある窪地があり、国の天然記念物に指定されているとあるのですが・・・気がつきませんでした!

季節によってはお花畑が一面に広がる場所を通過するようですが、すでにアルプスには秋が訪れており、花はほとんど見ることが出来ませんでした。

聖平から易老岳間は南アルプス南部でも特に美しい稜線として地図に記されていますが、本当にそう思います。そしてこの日もとても静か。三連休の中日とは思えない静かな山歩きを楽しめています。写真はもうすぐ茶臼小屋下降点に近づくあたり。

茶臼小屋下降点に到着。目の前には茶臼小屋があります。実は余裕があれば茶臼小屋には寄ってみたかったのですが、ちょうど改修工事が行われているということや、主稜線から一旦下らなければいけないということで今回はやむなくパスさせていただきました。次は是非立ち寄ってみたい小屋です。

下降点を示す標識で一休みしたのち、茶臼岳までの登りに取り掛かります。なだらかな登りには危険箇所などなく、雲一つない青空に飲み込まれていくかのような気持ちのいい登り。ただ暑い!

ほどなくして岩がゴツゴツした山頂部に到着。視線の先に山頂標識が見えました。お疲れ様でした!午前8時24分、茶臼岳登頂です!標高は2,604mです。ここまでコースタイムのちょうど8割程度で歩けています。疲れたといってもまあ丁度いいペースです。

希望峰、易老岳へ

茶臼岳では休憩することなく先へ進みます。ここ数日の縦走中、ほぼ決まって10時ごろになるとガスが大量に湧いて来ていたので、出来るだけ早いうちにこのルートにメドをつけてしまいたかったんですね。

茶臼岳からまた一旦下ります。ゴツゴツした岩、浮石もありそうだったので丁寧に。まずは茶臼岳からコースタイム40分の希望峰へ向かいます。希望峰は仁田岳への分岐となる地点。光岳手前の易老岳へ向かう途中にあるポイントになります。

ゆるやかなアップダウンを繰り返しながら、一部木道が現れたりと歩きやすい道が続きます。

木道が続いているのが見える。木道を見るとこんな山の奥で整備するのは大変なことだろうなといつも考えてしまいます。

午前8時50分、希望峰到着です。樹林帯の中にある標識。そして、ここから一気に下ります。地図上で鞍部とあるわずか500mほどの区間ですが、この急下りはなかなかでした。ここは登りに使いたくない・・・と真剣に思ってしまうほどの下り。集中すれば10分ほどで下り切りますが注意が必要です。

鞍部の標高が2,335m、そこから1.8km先の易老岳の標高が2,354m。この区間は比較的アップダウンの少ない幸せな道でした。

と言っても全くアップダウンがないわけではありませんが、これまでの行程と比べると天と地の差。光岳までずっとこの道が続けばいいのにと祈るほどでした。

途中、ようやく光岳が見えて来ました。まだまだ先ですね。

はい!あっという間に易老岳に到着です!樹林帯の中にある展望は???という易老岳。シラビソの木が倒れ掛かり、申し訳程度に置かれた白い標識を見落としそうな山頂です。到着は9時53分。聖平小屋から歩き始めて5時間8分での到着でした。コースタイムの約7割です。我ながらよく頑張って歩いた区間です。

光岳小屋、光岳

易老岳からの長く辛いこと

易老岳は芝沢ゲートから入り易老渡からの急登を登り切って稜線に出た場所。ここから先は日帰り光岳の際に既に通った道であるものの、ここからがまたとても長いのです。光岳小屋までコースタイムで2時間30分!さあ頑張りましょう!

初めに出てくるのはシダと立ち枯れの広場のような場所。11月に来た時は寒々しい場所でしたが、緑があるだけで景色が生き生きして全く印象が違いました。山は何度登っても同じ時はないというのがいいですよね。

さらに樹林帯をマーカーを頼りに進むこと数十分。三吉ガレ、三吉平が現れます。ようは大小の岩や石がゴロゴロと転がるゴーロの谷筋。これが登りにくい・・・前回この辺りはすでに雪が積もっていたので逆に楽だったんですよね。今回の登山の中で最もキツイと思った地点かもしれません。もう疲れが溜まっていたんでしょうね。途中何度も立ち止まり、汗を拭きながら少しずつ進みますが果てしなく続くように感じ、本当に倒れそうでした。

ようやくゴーロ地帯を通り過ぎたのは11時40分。静高平へ差し掛かりました。易老岳から1時間50分、今見ると辛かったけれどもコースタイムよりもかなり早く歩けていたようです。若干の傾斜があるものの、これまでの道に比べれば天と地の差!途中の水場もしっかり出ていましたが、テン場近くで汲もうと思ってパスしました。後でここで汲んで行けば良かったと後悔しました。

ようやく!ようやく赤い屋根の光岳小屋が木道の先に見えて来ました。木道の先、小屋の少し手前には少し広めのテン場が一箇所ありますが、小屋のすぐ近くのテン場の方が便利なのでそちらを目指します。

後になって撮影した下のテン場・小屋とトイレが遠いです
後の時間に撮った光岳小屋

光岳小屋に到着したのは11時55分。聖平小屋出発から7時間10分でした。時間はそれほどではありませんが、この区間は期間中最も疲れました。それでも、無事に到着出来たことは本当に嬉しいことでした。

受付へ行くと、女性の小屋番さんが予約を確認しながら丁寧に対応してくれました。そう、光岳小屋のテン場は週末などは完全予約制。縦走計画を立ていて大きなネックになったのはこちらでした。毎日毎日チェックしていると、突然予約可能となり即座に確保しました。

小屋番さんは登山者の事を名前で呼んでくださっていて、とても好感が持てましたね!小さな小屋だからこそで貼ると思いますが、嬉しいですよね。

小屋はこじんまりしているもののとても綺麗。小屋泊の方の寝床は一人一人ベッドのようになっており、間仕切りもあって快適そうです。何と言ってもマットレスが凄い。1階と2階に別れていました。

こちらも後で撮った写真ですが、小屋目の前の小さなテン場スペースを無事に確保できました。受付を終えてすぐに設営!今回の縦走で最後のテント泊6泊目となります。

光岳小屋テン場はペグ固定推奨

光岳小屋のテン場のルールとして、テントの固定にはペグ使用のことという注意事項がありました。実際テン場に石などは少なかったです。ペグは受付に置いてあり、無償で使えたようにも思います。

テントを設営した後にまずは光岳へ登頂!標高2,591mです。山頂付近からの展望はほぼありませんし、今回またしても前回登頂時と同じようにガス・・・

ただ、少し山頂部から進んだ場所からは光石らしきものも見ることが出来ました。

さあ戻ったら水の確保です・・・これがメチャクチャ下らないといけません。そしてとても激しい急坂。サンダルとかで下りてしまいそうですが、登山靴推奨ですね。かなり下まで下りると水が豊富に湧いている水場がありました。そしてまた戻らなければいけませんからね。

水場への下り。テン場のすぐ側から下りられるがかなりの急坂

小屋の脇から撮った富士山方面。ガスで見えませんでした。目の前の丘はイザルヶ岳。

光岳小屋では購入品のゴミは缶も含めて全て持ち帰りです。疲れ切っていたので売店でおでんのセットとTシャツを購入。コットンなんですがデザインがとても良くて気に入っています。ビールは小屋番さんが好きな水曜日のネコが置いてありました。

美味しかったですね!「山とおでん」思わずもう1セット食べたくなってしまいましたが、結構なお値段なため諦めました。小屋の前でコッヘルで温めながら食べていると、隣に小屋泊の女性が1人。地図を見ながら何やら調理をされています。そのまま山談義となり、結局1時間以上話していたかもしれません。ほとんど人と話す機会がなかった数日間なので楽しかったです。

光岳小屋の手作りカレー

縦走最後の夜。食事はいつものアルファ化米になるかと思っていましたが、小屋で提供していたレトルトのカレーが切れてしまったということで、シーズン初で手作りカレーを出す事になったと。食べませんかと声をかけていただき、二つ返事でお願いしました。

本来であれば軽食なども提供予定だった2023年の夏山シーズンですが、直前の豪雨の影響で芝沢からのルートが寸断されてしまったこともあり、軽食の提供は断念されていました。それが何とラッキーな事にという感じです。

料金は2000円ですが、最後の夜!奮発しました。

 

雲が多く湧いてしまって夕日はイマイチでしたが、南アルプス南部の広大な雰囲気を楽しみながら夕飯の時を待ちます。

出来上がったのはココナッツカレー!お肉!炊き立てのご飯!少し甘めのココナッツ風味のルーが胃には優しいカレーでした。一口一口味わいながらいただきましたよ。

食べ終わった後も席の近かった方々と山談義で盛り上がり、消灯時間までお邪魔してしまいました。テン場に戻った時にはあちこちからイビキの音が。私も横になった途端にすぐに眠りに落ちました。

最終日、下りで事故が・・・続きます

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