日本三大急登「甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根」日帰り - 修験の道は苔生した中に厳しい鎖あり

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甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根と剱岳・早月尾根はどちらがキツイんだろう?

2019年8月、甲斐駒ヶ岳黒戸尾根を日帰りで登ってきました。

距離で約16km、登山口から山頂までの単純標高差で2200m、実際の累積標高差で2600m以上というタフなコース。

烏帽子岳・ブナ立尾根、谷川岳・西黒尾根と並び日本三大急登と言われるのが今回のルート。

いつかいつかと思いながらなかなかチャンスが無かったのですが、この2週間前に同じく標高差2200mある剱岳・早月尾根を登ったこともあり、「どっちがキツイかな?」と体感的に試してみたくなって行ってきました。

2つの急登の比較や個人的な感想は最後に。

甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根の基本情報

まずは甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根を登るための基本情報です。

標高差は先に書いた通り2200ⅿ以上。結構ありますね。個人差になりますが、私は登り1時間で標高450~500ⅿが自分の平均的なペースだと思っています。コースの難易度によっては200ⅿになったり600ⅿになったりします。

ただ、無雪期・積雪期・残雪期によっても大きく違ってきますし、気温によっても変わります。ルート上のアップダウンの具合や鎖・ハシゴ・岩場の難易度などによっても時間のかかり方はまるっきり変わってきますよね。

こういう標高差があり、後から書くようにコースタイムも長時間にわたるようなルートを歩く際は、一定の登山経験を経てからが良いことは間違い無さそうです。特に今年は暑い時期の疲労による遭難が多かったようです。体調管理と自己判断はとっても大切ですね。

食べながら歩ける体力があるか

山に歩く時の自分の最大の関心は、行かなければ感じられない空気感や見られない景色を楽しむことにあるのですが、もう一つは歩きながら食べ続けるという楽しさだったりします。「あーよく歩いた、おやつ食べてまた頑張るぞ!」みたいな満足感?心持ち?今回もオニギリやパン、お菓子などの行動食をいっぱい持って登ってきました。

疲れ過ぎると食べられなくなるようです。山では「食べ続けられるかどうか」というのはとても大事なように思います。

黒戸尾根ルート登山口へのアクセス・駐車場

初めて歩く山に行くとき、登山口付近の情報というのはとっても大事ですね。

気になるのは、トイレがあるか、近くにコンビニがあるか(深夜にやっているか)などです。ネットで調べると色々と情報が入るのでありがたいし便利ですが、その先の登山道が自然災害の影響などで崩落しているなんていうこともあるので、しっかり調べないといけませんね。

2019年8月撮影

甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根の登山口は比較的街中に近く、山の中の林道を延々登っていくというような場所ではありません。目指すのは「竹宇駒ヶ岳神社(駐車場)」であったり「尾白川渓谷駐車場」です。どちらも同じ場所のことだと思いますが、無料駐車場が100台分ほどあり、24時間出入り出来ます。そして、とても立派で綺麗なトイレが駐車場に併設(写真奥)されています。これはとてもありがたい。手前側にはこじんまりした売店もありました。

この本は何年か前に買ったのですがとても楽しいです。

登山口の情報だけでなく、周辺の温泉や飲食店の情報も掲載されており、見ているだけでもその町に行ってみたくなります。ちなみにこの本には甲斐駒情報は載っていません。

黒戸尾根ルートの標準コースタイム

黒戸尾根の標準コースタイムは14時間40分ととにかく長いです。通常は8合目手前にある七丈小屋泊で1泊2日の行程が望ましいと思いますが、この日は時間がなかったのでやむなく日帰りです。

登り:9時間10分
下り:5時間30分
往復:14時間40分

午後12時を過ぎて山頂に到着していなければ登頂は諦めようと決めていました。下はポイント毎の所要時間です。

05:00駒ヶ岳神社 -30分-5:30 942m地点 -2時間-7:30笹ノ平分岐 -2時間-9:30刀利天狗 -1時間-10:30五合目 -1時間10分-11:40七丈第一小屋 -1時間-12:40八合目御来迎場 -1時間30分-14:10甲斐駒ヶ岳 -50分-15:00八合目御来迎場 -40分-15:40七丈第一小屋 -40分-16:20五合目 -40分-17:00刀利天狗 -1時間10分-18:10笹ノ平分岐 -1時間15分-19:25 942m地点 -15分-19:40駒ヶ岳神社

登山届の提出と地図の持参は忘れずに

登山届は電子登山届の「コンパス」で提出しましたが、登山口手前にも紙で提出できました。黒戸尾根はほぼ一本道の明瞭なルートではありますが、それでもスマホなどの登山地図アプリと紙の登山地図は携行です。

ではいよいよ登ってみましょう。

バリエーション豊かな甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根ルート

名古屋からは約3時間ほどでしょうか。珍しく前日の夕方に出発し、コンビニなどによりながら、登山口の駐車場に到着したのは夜の10時頃でした。前回の剱岳早月尾根が寝不足でしんどかったので、今回は反省を踏まえてしっかり寝て翌日に備えます。

事前の予定では4時に起きて出発するつもりだったのですが、安定の寝坊で出発は5時になりました。

これは下山時に撮影したのですが、駐車場奥に駒ヶ岳神社へ続く川沿いの細い道があります。写真右手の神社の左側を通って奥へ。

吊橋を渡ると登山道が始まります。では出発です。

豊かな南アルプスの森を歩く序盤

さすがに明け方と言っても真夏。むせ返るような蒸し暑さで登り始めから汗が流れます。

登山口直後は低い笹の中を綺麗な登山道が続きます。下山時には走り下りたんですが、凹凸も少なくて走りやすい道でした。軽装のトレランの方が結構いたのもわかります。

ブレていますが笹の平分岐です。

まだ山頂まで7時間あります。横手登山口への分岐とありますが、そちらから登られる人もいるのでしょうか。ちなみに横手登山口にも「横手駒ケ岳神社」という神社と駐車場があるようです。気を付けないといけませんね。

この辺りは綺麗な道でしたね。急登となだらかな道が交互?に出てくるような、標高はグングン上がっていると思うのですが、南アルプスの特徴でしょうか、樹林帯がずっと続きます。

気持ちのいい森。

苔むした森が何とも気持ちがいいです。

黒戸尾根前半は本当に気持ちのいい森の中の道。段差があるような道ではなく、急登とは言っても徐々に標高を上げていく感じなので比較的疲れを感じないまま進むことが出来ました。

ハシゴ・鎖を楽しむ中盤

前半の区切りとなるのが「刃渡り」というポイント。左右が切れ落ちた場所を岩を伝って登っていきます。ここまでが登山口から山頂までのちょうど中間地点というところでしょうか。

左手側が結構切れ落ちています。鎖が手摺状にしっかりついているので不安はないですね。50ⅿぐらいでしょうか、岩を登るような感じで切れた場所を進みます。

刃渡り通過は登り始めてから約2時間ほど。コースタイムの半分以下で来ていますがまだ疲れはありませんでした。

何とも言えず雰囲気のある登りが続きます。

長い階段が現れます。アイゼンの爪痕でしょうか、無数の傷が付いています。ここは冬に来ると全く違った雰囲気なんでしょうね。

ブレた・・・。

登ったり下ったりと小さなアップダウンがありました。

少し下った先にパッと視界が開ける広場のような場所。ここが5合目小屋跡のようです。

出発から約2時間30分。ここでしっかり腰を下ろしてオニギリ休憩としました。この日が「山と道 MINI」のデビュー。雨具と食料、真夏なのでプラティパスハイドレーションに3Lの飲料を詰めていますが、総重量は5kgもないでしょうね。

15分ほどゆっくりと休憩。ガスで景色は真っ白ながら、静かな山の中でノンビリとした気持ちになりました。こういう時間がなんとも贅沢です。

五合目小屋跡からさらにしばらく下ると鞍部に。これが屏風岩?でしょうか。巨大な岩と祠が目の前に現れます。

無数の碑や石仏?。修験の山、修験の道なんですね甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根は。単純に思うことは、こんな重いものをよく運んだなと信仰の力に感服します。

しばらく進むと空中に浮いた吊橋が現れます。しっかりしているし手すりもあるので不安はありませんが、すごいところに通したものです。

先の台風19号(2019年)ではこの黒戸尾根も破壊的なダメージを受け、どうやらこの橋も落ちてしまったようです。現在懸命の復旧作業に当たられているということですが、作業すること自体も大変そうな場所。どうかお気をつけて。また大勢の登山者が楽しめるようになることを願ってやみません。

この後は次々と長短のハシゴが現れました。もう数えるのも大変なほど。ハシゴ、鎖の連続です。前半とは打って変わってですが、個人的にはとっても好きな登り。ハシゴに汗を落としながら、息を切らして登りました。

これは登り切って下を振りかえっていますが、なかなかの角度ですね。

これは登った鎖を振りかえって撮ったと思いますが、鎖の先は真下に続いていたような。ここはなかなか緊張感がありました。このあたりが甲斐駒ヶ岳黒戸尾根の核心部なのだろうと思います。個人的にはとても好きな場所、楽しいですよ。

中盤から七丈小屋までの登りはなかなか。鎖・ハシゴの連続はスリリングで前半とは打って変わり、違う種類の山を二つ登ったような感覚になります。

七丈小屋と展望開ける山頂までの最後の登り

鎖、ハシゴを越え、目の前に現れた看板。

出発から3時間15分。無事に七丈小屋に到着です。

小屋と小屋前に設置された水場。水は有料です。いわゆる南アルプスの天然水ですね。

コーラいただきました!生き返ります。ここでゆっくりと栄養補給と水分補給。小屋から山頂まではコースタイムで2時間半ほど。12時までに到着という目標は十分達成できそうです。結局15分程休憩させていただきました。

こちら壁に貼ってあったメニュー表。他の山小屋のような軽食メニューは提供できないのでしょうね。ソース焼きそば美味しそう。ここでしっかりと休憩し、最後の登りへ向かいます。

小屋の裏手側に階段。このあたりから甲斐駒ヶ岳独特の白い山肌を作る花崗岩?が目立ち始めます。ザレザレの道が多そうで、ちょっと苦手なんです。

小屋から少し登った場所にはテン場。あまり広くはありませんが、少し開けているので気持ちは良さそう。ここで泊って明け方前に山頂を目指すというのはいつかやってみたいですね。

残念ながらこの辺りからグングンガスが上がってきて、視界が真っ白になるほど包まれる時間も。

このあたりが8合目のご来光場と言われる場所かと思いますが。真っ白。ただ、そのおかげでかなり涼しく登れました。8月の山は赤とんぼが飛び交っていましたが、森林限界を超えると今年は暑かったので助かりました。

ここからは山頂まで700ⅿ、1時間30分。長かった道のりもあと僅かです。

見たことのある地点。ステップがしっかりあるので鎖はなくても登れます。下りる時はちょっと注意でしょうか。

時折ガスが薄くなると白い山肌が見えてきます。綺麗な山だなと見とれていました。

9合目となる二本剣。大岩に剣が二本打ち込まれています。甲斐駒ヶ岳のシンボルと言ってもいいかもしれませんね。黒戸尾根から登らないと見ることが出来ません。この先に広がる景色を見たかったのですが、生憎のガス。少し待ちましたが晴れてはくれませんでした。

花崗岩の大きな岩を乗り越えていく地点がありました。アスレチックみたいな感じ。特に不安を感じる部分はありませんでしたが、ルートがあっちこっちあって、若干わかりずらかったです。

ようやく山頂手前という所で突然青空が前方に広がりました。ガスに包まれた山も雰囲気があっていいんですが、やっぱり山は青空が似合います。長かった黒戸尾根ももう一登り。山頂は北沢峠からの登山者で混み合っていそうです。黒戸尾根を歩いている時にすれ違いは数人だけでした。ちなみに北沢峠からのコースタイムはルートによって違いますが3~5km、約4時間です。

摩利支天はガスの中。

お疲れさまでした。ちょうど10時に山頂到着。登り始めから5時間。時間的にはそれほどかかっていませんが流石に疲れました。山頂は混雑していたのでその合間に急いで写真を撮ってもらいました。

ちなみに登山靴は今回もスポルティバのシンセシス。この夏はほとんどこの靴で登りました。

女性で履いている方を良く見ました。柔らかくて履きやすいですからね。ゴアテックスサラウンドで蒸れ知らず。先日の奥穂・前穂もこれで行きましたが、岩場でのグリップも問題ありません。とてもおススメ出来る登山靴です。

ガスはかなり濃かったのですが、時折見える青空を眺めながら、近くの岩に腰かけてオニギリやバームクーヘンなどのお菓子を食べてノンビリ。風が吹いていましたが寒くはなくて心地よい時間でした。

北沢峠から登った前回とは全く違う黒戸尾根からの甲斐駒ヶ岳。その時は長男みーと一緒でした。途中でシャリバテ気味になり、きつかった思い出が残っている山。まだみーも小さかったなと懐かしく思い出したりしていました。今は受験で頑張っているので、またいつか落ち着いたら次男みぃ君も一緒に登れたらいいなと。

結局山頂で30分ほど休憩していました。その間にもガスがどんどん上がって来ます。これは雨が来るかもしれないと思い下山。

走って走って黒戸尾根下山

見出しの通り、黒戸尾根は下山がとっても早い。岩場以外は結構な距離を走りました。トレランは全く経験がないのですが、このルートは気持ちいいだろうなと思いました。

ガスから逃げるように走った感じですけどね。

それでも七丈小屋で黒戸尾根の手ぬぐいとネクター。また15分休憩。これが最後の休憩でした。長いルートなので合計で1時間ほど休憩をとったのは良かったと思います。

なかなかの高度感ですよね。これ落ちたら助からない感じかもしれません。

気をつけながらも走って走って。無事に登山口の駒ヶ岳神社に到着したのは午後2時ちょうどでした。最後は3Lの水がちょうど切れて、ギリギリセーフでした。

結局時間としては1時間ほどの休憩を含めて9時間。コースタイム比では61%ほどの時間で黒戸尾根の往復を無事達成出来ました。正直もう少し時間をかけても良かったかなと思いましたが、下山直後には猛烈な雨が降ってきて、最後にガスから逃げるように走った選択は良かったかなと思いました。

一度は経験してみようかというルートとのことですが、一度と言わず何度でも楽しめそうな黒戸尾根だと思います。次は季節を変えて、装備を変えてテント泊などでも楽しんでみたいと思います。

下山後温泉「尾白の湯 べるが」

下山後は車ですぐの「尾白の湯べるが」へ。ここは二度目になりますが、泉質がとっても変わっています。

「赤湯」と呼ばれる赤褐色の湯は温泉法が定める基準値の約30倍のミネラルなどが溶け込んでいるとのこと。私はこのお湯大好きで、ぬるいこともあって豪雨の中ずっとつかってました(笑)

もう一つは「白湯」と呼ばれる源泉に名水を足した湯。薄めているわけですが、それでもお湯に溶け込む成分は通常の3倍以上という濃い濃度とのこと。

この温泉は川遊びやキャンプ場利用客も使うため、いつもとても混んでいるようです。今回もシャワーを使うのにしばらく待ったりしましたが、泉質は折り紙付きです。

甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根と剱岳・早月尾根

8月に二つの尾根からそれぞれのピークを目指して歩いてみて思ったことは、どちらも個性的でとても面白いルートだということでした。

8月前半に歩いた早月尾根からの剱岳は北アルプスらしい険しい山頂部の岩場と意外なほど多かった高山植物を楽しみながらの道でした。甲斐駒ヶ岳に比べると緩やかな登りは少なく、足を上げながら登り、下山でも走れるような場所はほとんどありませんでした。その分時間的にも早月尾根の方がかかったように思います。

甲斐駒ヶ岳は傾斜も道のバリエーションも豊で、いくつかの山を一日で登ったかのような印象。苔むした序盤は南アルプス独特の雰囲気を楽しめました。

個人的には疲労度で言うと圧倒的に早月尾根。登り一辺倒なので傾斜がきつく、登り以上に下山に神経を使い、足にきましたし、疲れて最後はあまり覚えていません(笑)。一方黒戸尾根は下りの最後が緩やかな樹林帯ということもあり、疲労を抜きながら下山しているような感じでした。

それでも個人的には開放感のある山が好きなので、どちらかと言われれば早月尾根の方が好みです。この辺りは個々で好き好きは変わって来るでしょうね。それでいいのだろうと思います。

日本に名だたる急登二つを8月に登れたのはとてもいい経験となりました。

 

 

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