【西穂高岳】無性にテント泊がしたくなって残雪期の西穂高岳をノンビリ歩いてきた
最終更新日 2023-12-05西穂高岳は前年7月に夏山スタートで歩いて以来。残雪期とは言え積雪のある時期に来たのは実に3年ぶり。厳冬期氷点下20度近くまで下がった過酷なテント泊とは違って今回はポカポカ陽気の中で北アルプスの空気を楽しむ1泊2日のノンビリ登山。快晴に恵まれた山歩きの様子を記録しておこうと思います。
ベースキャンプとなる西穂山荘前は多くの登山者で賑わっていました。
個人的なことですが、西穂高岳は6年前の長男の事故直前に登っている山なので何となくいつも胸騒ぎを抱えながら登っていたりします。
目次【お好きなところから】
雪の西穂高岳
残雪期とは読んで字の如く「雪が残っている」時期ということになりますが、北アルプスの奥の方では7月でも登山道上には雪が残り、早ければ9月、遅くとも10月には雪で覆われます。日本アルプスの高山帯は殆どの時期が積雪期か残雪期の中にあると言えるのでしょう。その中でも雪の降り始めから年末年始から1月末2月初め頃の厳冬期は積雪期?その後の3月あたりからは残雪期と自分の中では整理しています。
山域や年によって天候も雪の状態も全く違いますから一概には言えませんが、残雪期だから安全なんてことは全く考えていません。げんに今年も4月の八ヶ岳で雪崩により登山者がお亡くなりになっていますしね。グズグズのアイゼンの効かない残雪期の山も本当に怖い事がままありますし。山に登る前には出来るだけ情報を集め、さらに現地で雪の状態などを判断するようにしています。命あっての登山ですからね。
登山道具も厳冬期と残雪期では結構違います。以前こんな記事も書いているのでもし厳冬期の西穂テント泊に興味のある方はご一読を。
条件と力に合わせてピークを決められる山
そんな北アルプスの中でも通年で小屋が開いており、力に合わせて目指すピークを決めながら楽しめる山が西穂高岳ではないでしょうか。西穂高岳の主な登山入り口となる新穂高温泉からはロープウェイで登山口まで標高を稼ぐことが出来ます。
そこから約1時間程度雪の登山道を登れば通年営業をしている西穂山荘に辿り着けます。とはいえやはり雪山。以前このルートを普通のコートと靴で登っている若い方がいましたが非常に危険です。西穂山荘までも急な登りもあれば、樹林帯といえども天候次第では低体温症にもなりかねません。普通の靴では凍傷も危険。
西穂山荘からは約20分ほどの西穂丸山、さらに進めば1つの目標となる西穂独標を目標に雪の北アルプスを楽しむことが出来ます。そこから先は若干難易度が上がりますがピラミッドピークやチャンピオンピーク、そして西穂高岳山頂までそれぞれの力に合わせて目標地点を決めて歩くことが出来ます。雪山を初めた登山者の一つの目標ともなっている山ですね。
雪の時期のアクセス・駐車場
西穂高岳登山ではロープウェイを殆どの登山者が利用すると思います。時期によって始発・最終の時間が異なるので詳しくは新穂高ロープウェイ公式HPで確認が必要ですが、今回登った4月で言うと始発は8時30分でした。時間前には建物の外に長い行列が出来るので早めに到着して並ぶことが必要になります。
車の駐車場は今回は夏と同じ深山荘前の登山者用無料駐車場「市営新穂高第3駐車場」へ。3月頃まではより近くの駐車スペースが登山者用に開放されますが、時期的に既に閉鎖されていました。
さあ前置きが長くなってもいけませんから早速登山を開始したいと思います。
残雪期西穂高岳テント泊・絶好の登山日和
2022年4月初め、日曜の天候は微妙ながら土曜は風も弱く快晴が見込めることから急遽車を走らせて新穂高へ向かいました。なぜか無性に雪山でテント泊がしたくなってしまったからです。そんな時に都合がいいのが西穂。コロナ禍にあってもテン場は予約制ではないのもありがたい。
到着は午前7時前だったと思います。簡単に持参したおにぎりなどを口に入れて急いで準備。
冬靴はどうしても足が擦れやすいので靴擦れ防止の必須クリームとなっているProtect-J1を塗って出発です。
ロープウェイの始発時間まではまだ時間があるものの登山者が次々歩いていきます。
新穂高登山指導センター前まで来るとこの景色・・・もう帰ってもいいかなという満足感(笑)。夏山の時はここを通過する時は大体真っ暗闇ですからね。上高地からの穂高もいいですが、新穂高は好きな時間から登り始められるのがお気に入りポイントです。
ロープウェイはネット予約が良さそう
ロープウェイ前には既に40~50人ほどが並んでいます。荷物を見ると日帰りから小屋泊・テント泊まで色々。あまり寒くなかったので待つ時間も苦痛ではありません。さて今日は山頂まで行ってしまうかそれともテントの中でゴロゴロして翌朝山頂を目指すか・・・グルグルと頭の中で考えていましたが、この天候を無駄にするわけにはいきませんよね。
時間になったことが告げられて整然とロープウェイ駅の中に登山者が吸い込まれていきます。まあ見事に登山者だらけ。ネット予約も出来るようになったようですが、気づいた時には既に始発便は一杯でした。しかしネット予約だけで始発便を満席にすることは無い様子でちょっと安心。
ロープウェイを乗り継いで終点駅へ。今年は雪が多く4月でも終点駅は雪が一杯でした。
西穂山荘までの気持ちいい樹林帯歩き
西穂山荘までのルート、最初は平坦な雪の道を進みますが、すぐに急登が始まります。それでも西穂までの樹林帯の気持ちがいいこと。
時折チラ見えする雪の稜線を眺めながら進みます。青空に白い穂高の稜線を見て誰もがウキウキしていたはず。樹林帯の終わりかけに長めの急登。ここを登り切ればもう西穂山荘は目の前です。
真っ白な景色の中に西穂山荘の赤い屋根が突然飛び込んできます。ここまでくればテントを詰めた重い荷物ともお別れです(笑)。
西穂山荘前は指定幕営地。すでにテントが何張りかありますが、前泊組のよう。この日のテント組では一番乗りでした。
いつものカミナドーム1を急いで設営。マットやシュラフは簡単に広げてとにかく山頂に向かう準備を急ぎます。あまりの気温上昇で雪が腐るのではないかと思い始めていました。ちなみにテント泊は1人2000円です。高くなりました・・・。水は雪を溶かしてもいいですが、山荘内のペットボトルを購入する方がいいかな。
事実、山荘前のにしほ君は一日でグズグズに溶けてしまいました。この日は異常に暖かったです。
西穂高岳ピストン
テントを設営し、早めの昼食を兼ねた栄養補給を行って絶好の青空の中を西穂高岳までピストンしてきます。西穂山荘から標高2908mの西穂高岳山頂まではコースタイムで登り3時間、下り2時間10分の合計5時間10分ほど。日帰りであればロープウェイの終発までに戻らなければいけませんが、そこはテント泊のメリットということでノンビリ、しかし天候も見ながら安全第一に行きましょう。
行ってきます!ザックには入れましたが風も弱いのでバラクラバ、ゴーグルはせずにサングラスのみで。
まずは小屋横を登っていきます。夏であれば大きなゴロゴロした岩の斜面となりますが、この時期は全て雪の下。前日降った雪が10cm未満でしょうか積もっていて少しだけ足が取られます。
小屋横の斜面を登り切ればすぐにこの景色・・・最高の天気です。ギザギザした切り立ったピークの奥に西穂高岳。これからあそこまで歩きましょう。写真は撮りませんでしたが小屋から歩き始めて20分もかからずに一つ目の目標となりえる丸山の標識へ。ここまでと決めている方も多いように思いますが、それでも十分な絶景です。
写真の左下あたりに人が集まっているのが丸山かな?多分。丸山までは特に危険個所はありません。
山デビューとなったOM-1の手持ちハイレゾで撮影してみました。PCの大画面で見ると精細さがよくわかります。余談ですが12枚?かの通常写真を約5秒でカメラ内合成して精細な一枚の写真とするOM-1のハイレゾショットは使い勝手もとても良くなって撮影がより楽しくなっています。
西穂独標まで続く長い登り。結構風も吹いていますが日差しが暖かくて気持ちよく登れました。それにしても空が青かった!
エビの尻尾。真っ白ではなくて透明な氷になっていました。
さあまずは西穂独標が近づいてきました。山頂直下の雪の斜面は夏でもたまに渋滞することがあります。独標の手前でヘルメットを装着、ストックからピッケルに換えて準備よし。
独標直下です。下りてくる若い登山者が案の定下りれなくなってしまって足の位置を指示されているところです。ここで怖いと思ったらまず先は行かない方がいい。この日はすでに何となくステップも出来てきていてアイゼンを利かせながら問題なく通過出来る状態でした。
上から見るとこんな感じですね。右手に巻きながら下りていく感じです。
独標標識は記念撮影の方で一杯だったので何となく一枚だけ撮って先へ。独標からの下りは岩と木製のステップなどが出ていてアイゼンの爪を引っかけないように注意しながら降下。ここが11峰、山頂が1峰なのかな?いくつものピークを登り下りしながら進むことになります。
独標から。
自分的にはピラミッドピークまで来れば後は若干緊張が解けるように感じています。注意しなければならないのは山頂直下ではあるけれど。ここまで一気に撮影無しで(笑)。
グズグズになっていたり強風が吹いていたりすると神経を使う斜面の登り。
時折息を付ける場所があるので短い休憩を取りながら慎重に。この斜面では1人2ⅿほどですが滑ってました。登ったり下りたり、雪の斜面をトラバースしたりの連続。
そうこうしているとあっという間に山頂直下に到着。右手の岩の横を登り詰めます。何年か前の1月に来た時にはここがカチカチに凍っていて神経使ったのを覚えています。この日は雪がしっかりついていて歩きやすかったです。
振り返る。
はいお疲れさまでした!西穂高岳山頂到着です。
珍しく撮ってもらいました。今年はジャンダルム歩けるかな・・・?冬の山頂は10人もいると狭く感じる状態。夏場はもう少し上高地寄りの斜面側に行けますがこの時期はさすがに危ないですからね。少し腰を下ろして周りの景色を楽しみながら行動食を口にして休息。
では下りましょう。雪山ではゆっくりノンビリ休憩をすることは難しいこともあるので長時間の行動になりがち。下りは登り以上に慎重に慎重に。山頂直下の下りは若干渋滞しながらも問題なく通過。その後の大小のピークも疲れながらも通過。気温が上がって暑い・・・。
雪庇にも注意。
ようやく独標直下まで戻ってきました。ここを越えてしまえば。行きと違って登りになるのでスイスイと。
ようやく周りの景色を眺める余裕も。笠ヶ岳方面。いつも日帰りだから今年はテン泊したいな・・・。
奥穂方面。今年は7月に涸沢方面を計画していますが、それとは別にどんなルートで歩けるか。
独標でしばし休憩をしたのちは最後の下りを慎重に。沢山の登山者が通過しているのでステップはあるようなないような。心配していたグサグサな状態まではいっておらずアイゼンが程よく効いて問題なし。
随分雲が出てきて太陽も雲の中に。少し天気の崩れが早い?雲間からの太陽の光が雪面に変化を与えて綺麗でした。
無事に西穂山荘へ到着。お疲れさまでした。いつもはテント泊二日目のまだ暗い時期から登る雪の西穂高岳。朝陽に照らされた雪の西穂の美しさは格別ですが、青空が一杯に広がった昼の西穂もとても良かった。でもやっぱり早朝の西穂にまた登りたい。
贅沢なダラダラ時間を雪山テント泊で
西穂の何と言ってもよい所は北アルプスの雪山でありながらテン場目の前の西穂山荘でダラダラ出来ること(笑)。
自販機でビールを購入して昼間からまるで居酒屋。初日に登ってしまったので明日は帰るだけだと考えるとゆっくり寝るしかありませんからね。でも珍しく仕事の事や子ども達の事など色々な事を考えてしまいました。時はちょうど入学式前。
4月ですね。短歌を、いくつか☺️
ぶらんこにうす青き風見ておりぬ風と呼ばねば見えぬ何かを
春一番の思いよ届け青空はあなたに続く色の階段
散るという飛翔のかたち花びらはふと微笑んで枝を離れる
制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている
— 俵万智 (@tawara_machi) April 2, 2022
たまたまTwitterを見ていると俵万智さんの詠まれた短歌が目に留まり、テントの中で何故かホロホロと涙が。日本での子ども達の入学式と戦争の下でのウクライナの子ども達のことを重ねて思いを馳せていました。歳でしょうか涙もろくなりました。
コーヒーを淹れたり(インスタントですけどね)、小腹が空いてレトルトの味噌汁をのんだり。ダラダラと本当にダラダラと。風の音と気温の変化を感じながらボーっと。贅沢でした。
テントの中でシュラフにくるまってウトウトしていると「夕陽が!」という声。急いでカメラを持って外へ出ると小屋の裏手から西の空が燃えています。
上空に少し雲が重く垂れこめているけれど、それでも久しぶりの山の夕焼け。綺麗だ。
垂れこめた雲の下に一瞬でも沈む間際の太陽が出ないかと願ったものの叶わず。それでも今年も山はどんな景色を見せてくれるのだろうかと未来に期待が高まる時間でした。
テン場にも雲が迫ってきてあっという間に真っ白に。
そのままシュラフに入って寝ていきました。夜は物凄い暴風。雪も降りだして荒れ模様。それでも10時前頃に一瞬静かになったと思って空を眺めると満天の星空。少し明るかったので写真は諦めて寝てしまったもののもしかしたら好天するのか?と思いながらまた深い眠りに。
下山
目を覚ますと風の音は少しおさまっていました。時間は午前4時前。まだ真っ暗ながらヘッドライトの灯りが動き始めています。雪の時期でも山の朝は早い。お湯を沸かしてコーヒーをいただいたりしていると少しずつ外も明るく。
期待は外れてやはり曇天。もし好天していたら途中まで撮影のために登り返そうと思っていたけれど潔く諦めます。
ナンガのテントシューズの中にホッカイロを入れて寝たのでポカポカ。低温火傷には気を付けないといけませんがおススメです。
外は夜半に降った雪でフカフカ。
途中一度青空も見えたのです。しかし山の天気は優しくない。前日に登っておいて良かったと考えながらゆっくりと撤収。
3年ぶりの雪の西穂をノンビリ堪能した2日間でした。
最後までありがとうございました。
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