3000m峰をつなぐ爽快な稜線歩きが魅力!南アルプス赤石岳・悪沢岳周回(1日目)~ルートの魅力とアクセス方法も
最終更新日 2023-12-05もう随分と前のことになってしまいましたが、南アルプス南部の赤石岳・荒川三山(悪沢岳)を単独で歩いてきました。
2018年夏の山歩きで最も印象に残った2日間。
小屋開け前の塩見岳に続き、南部の山域を初めて歩き、「若い時は北アルプス、歳をとったら南アルプス」と言われる所以も少し分かったような気がします。
年が変わる前に今年一番の山歩きの記録を書き残しておこうと思います。
目次【お好きなところから】
南アルプス南部の山の魅力を体感しに
今年は中々山に行く時間を取れなかったのですが、それでも塩見岳、赤石岳、悪沢岳などの南アルプス南部の山歩きはとても印象に残っています。
何と言っても人の少なさ、贅沢な時間を満喫
8月の後半、まだまだ夏山シーズンの週末に登ったのに、登山者の少なさは驚きでした。
初日赤石岳の5時間で出会ったのは7人、宿とした山小屋では自分の就寝スペースの両脇は空きなどのエピソードで雰囲気は伝わるでしょうか?
聞こえてくるのは自分の息づかいだけ。コースタイム27時間超の今回の山歩きの最中、殆どの時間を一人だけの静かな時間を過ごせました。
もちろんグループでの登山や賑わう登山道も違う楽しみがありますが、大きな山の中で見渡す限り自分だけという雰囲気はとても贅沢なものでした。
登山者の少なさ=南アルプスの山に魅力がないという訳では決してなく、入山管理にもつながる独特のアクセス方法に1つの所以があるのかもしれません。
常に富士山に見られながら、南アルプスの巨大さに圧倒される
南アルプスの巨大さは、歩いてみるとたおやかで女性的なイメージに繋がりました。北アルプスのゴツゴツした尖ったイメージとは違う山の魅力を感じられるのも素敵な時間でした。
なめらかで巨大な曲線を描く山の姿を目の前にすると、一瞬日本ではないような錯覚を覚えます。
常に富士山が大きく視界に入るのも南アルプスの山の特徴。絵になる景色がこれでもか!と続き圧倒されました。
比較的長い距離を危険なく歩ける
今回のルートは距離27km。しかし2日間かけて百名山を2つつなげて歩くルートの途上、いわゆる危険箇所はありませんでした。
静かに山に入り、巨大な山塊の中をゆったりと歩く時間、もちろん緊張感は大事ですが、気持ちに余裕を持ちながら、老若男女楽しみながら歩けるのも南アルプスの魅力なのかなと感じました。
まだ南アルプス初心者の私。今年の冬も少しだけ南アルプスを歩けたらと思います。冬はまた美しいだろうな・・・。
では本編へ。
今年は南アルプスを歩こうと決めていた
一昨年、白峰三山を歩いた時に感じた長く、静かな南アルプスの姿。また歩いてみたい、もっと歩いてみたいとずっと考えていました。そこで、2018年の夏山シーズンは南アルプス南部を歩くことを決めていました。
行こうと思ってもなかなか時間がとれず、ようやく予定がたったのは8月26日~27日の2日間。赤石岳・荒川三山の周回コースは総距離27Km。距離からすると2日間で十分歩ける距離なのですが・・・。そこは一筋縄ではいかない南アルプス
椹島へはバスでアクセス、ただし時間制限はとても厳しめ
南アルプス南部の登山基地となるのは「椹島(さわらじま)」。ここにアクセスするには、まずは手前の畑薙第一ダム(夏期はさらに手前の「夏期臨時駐車場」)へ車でアクセス。車を置いて駐車場前から発着する「東海フォレスト送迎バス」へ乗って椹島へ向かいます。
この送迎バスの始発時間が午前7時30分と登山バスにしては超遅め。バスに1時間乗って椹島へ着くのは8時半予定です。さらに、椹島から駐車場までの最終バスが15時30分発とこれまたシビア。
標準コースタイムを見ると、初日9時に椹島を出発したとして以下のようなスケジュールが想定されます。
・
09:00 椹島 – 09:55 中電基準点 – 10:55 1741m地点 – 12:00 2057m地点 – 13:10 ボッカ返し – 13:45 尾根上の小ピーク – 14:20 赤石小屋 – 15:05 富士見平 – 16:05 砲台型休憩所 – 17:15 椹島下降点 – 17:45 赤石岳 – 18:05 椹島下降点 – 18:40 小赤石岳の肩 – 19:20 大聖寺平 – 19:55 荒川小屋(1泊)
【2日目】
04:00 荒川小屋 – 04:35 標柱 – 05:30 3049m地点 – 05:35 前岳 – 05:40 3049m地点 – 05:50 中岳 – 06:25 コル – 07:35 東岳(悪沢岳) – 08:10 丸山 – 09:00 千枚岳 – 09:15 2770m地点 – 09:40 千枚小屋 – 10:15 駒鳥池 – 11:05 見晴台 – 11:45 清水平 – 12:45 小石下 – 13:05 1463m地点 – 13:40 鉄塔下 – 14:25 滝見橋 – 14:45 椹島
名古屋から高速を走り、長い長い下道を走り抜けて真っ暗な夏期臨時駐車場に到着したのは午前2時ごろ。そのまま仮眠を取り、起きたのは5時過ぎでした。駐車場はとても広く、この日は車も空いていたと思います。
駐車場を上がった所にバスの停留所。ここで失敗を一つ。写真にも写っているザックの列。早めに起きてザックなどで順番を取っておかないといけませんでした。気づいてからすぐに自分のザックも並べたのですがかなり後ろの方。その後も次々と並んでいきます。
宿泊指定小屋はこちら
椹島(さわらじま)ロッヂ、椹島登山小屋、二軒小屋登山小屋
千枚小屋、赤石小屋、荒川小屋、百間洞山の家、熊の平小屋
赤石岳避難小屋、中岳避難小屋、高山裏避難小屋、小河内岳避難小屋
今回は荒川小屋を利用しました。
これらの小屋のうちどれかに泊まらなければいけません。逆に言えば、1泊2日で回るならばテントは不要。いつものテント泊装備がない分スピードが出せる→何とか2日間で周回できるんじゃないか!と考えたわけです。
始発バスに乗り遅れる痛恨のミス!椹島に9時到着
何とか2便目のバスに乗り込み、物凄い悪路を揺られること1時間。ようやく椹島へ到着したのは午前9時少し前。予定よりも1時間近く遅れた分は前半で取り戻すしかありません。
早速出発。まずはコースタイム5時間15分の赤石小屋を目指します。ちなみに椹島の標高は1120ⅿ。
最高点の標高: 3112m
累積標高(上り): 2967m
累積標高(下り): 2953m
累積標高は約3000ⅿとかなりキツイですが、南アルプス南部の3000ⅿ峰をグルっと周回するルートなだけに仕方ありません。
時計回りに赤石岳~荒川三山縦走スタート(1日目)
東尾根、別名「大倉尾根」は結構な急登だけど登りやすかった
まずは椹島から赤石岳を目指し、東尾根を歩きます。
道を切り開いた大倉喜八郎氏を称えて「大倉尾根」と呼ばれる東尾根。財閥の設立者であった大倉氏は、自分の所有する地域の山で最も高いと思っていた「赤石岳」へ88歳で登るためこの道を切り開いたとのこと。ちなみに登ると言ってもカゴに乗って。
まさに大名登山のために作られた大倉尾根。現在でもその道が使われているとなると、大倉喜八郎様様ですね。
東尾根はしょっぱなから急登です。ひたすら樹林帯の中を黙々と歩を進めます。このルートは下山で使うことも多いそうですが、理由はよくわかります。猛烈な暑さと視界の開けないルートを登るというのは苦行そのものです。
そんな時、パッと目に入ったのがこの標識。
この標識が距離に応じた等間隔に設置されています。景色の変化の少ない樹林帯なだけに、これはとても助かりました。
ただ、コースタイムで5時間超かかるという赤石小屋までを5等分にしたとすれば、標識と標識の間は1時間かかるはずですが、1つめの標識を見つけたのは登り始めから23分後。あまりにも早すぎるので初めは信用できませんでしたね。
これは標識は間違いないようです。あと30分で小屋という標識をみてようやく信用。この標識の後は水平移動のような道が続きます。次第に石畳が現れて、パッと目の前に真新しい建物が飛び込んできました。
それにしても東尾根は登りごたえのある道でした。樹林帯ではあるものの、美しい森を静かに一人歩く気持ちの良さ。木漏れ日がとても美しい道でした。
赤石小屋から赤石山脈の盟主「赤石岳」へ
赤石小屋到着は12時。登り始めから3時間丁度。コースタイムの56%で乗り切ることが出来ました。特に急いだというつもりはありませんから、この区間は少し甘めにコースタイムを設定しているのかもしれません。
赤石小屋では水の補給。ありがたいことに無料でした。ちょうどお昼ということで、おでんを注文し手持ちのオニギリを食べて昼食としました。
炎天下で食べるおでん!なかなかです。小屋はとても綺麗でした。案内に出て来たスタッフが「悪沢岳」というTシャツを着ていたのはちょっと笑いそうになってしまいました。
小屋からはこれから向かう赤石岳がよく見えます。まだまだ遠くに見えますが、山頂までのコースタイムは3時間25分。すぐ傍です。
富士見平からラクダの背へ
ダラダラと30分以上の大休憩となってしまいました。それぐらい気持ちのいい小屋。いつか泊まってみたい小屋です。ちなみに少し離れた場所にテン場がありましたが、眺望などはあまりなさそうでした。
小屋を通り過ぎ、ダケカンバとシラビソの林の中を軽く登っていきます。30分分ほどで富士見平という眺望のいい平地に到着しました。ここからは赤石岳がより近くハッキリと見えました。
こちらは翌日登る予定の荒川三山方面ですね。山頂付近の白い山容がカッコいいです。
富士見平の標高は2700m付近。目指す赤石岳は3120mですから、あと400mほどの登りが残っています。この時点で時刻は午後1時。初日の目的地である荒川小屋までのコースタイムは大よそ5時間。急ぎます。
時折こんな感じの道が現れます。ほぼ空中に浮いているような状態でした。
正午を過ぎ、日差しは物凄い強さで体に降り注ぎます。塩飴を舐めながら、水をどんどん消費しないと倒れそうな暑さです。
ラクダの背と呼ばれる部分を通り過ぎると、沢伝いに標高を上げるルートへ到着。冷たい水で顔を洗うと塩でジャリジャリした肌がとても気持ち良かったです。
富士山を見ながらの登山。写真の真ん中下あたりに小さく赤石小屋が見えているのがわかるでしょうか。徐々に標高を上げています。
この辺りはこの日の中でも最もしんどい地点でした。前半でコースタイムを短縮出来たこともあり気持ちはかなり楽だったのですが、それでも小屋への到着時間を何度も何度も逆算しながら、休憩を極力減らして登りました。
写真に写っている男性はたまたま赤石小屋で一緒になった方。この後赤石岳山頂までずっと一緒のペースで歩きました。同じマックパックのザックということで何となく親近感を覚えましたね。
標高3120m、日本百名山「赤石岳」に無事登頂
初日の宿営地、荒川小屋へ急ぐ
先にも書いたように、今回の山歩きの中で小屋泊は避けて通れません。「必ずどこかの小屋に泊まる」約束で、バスに乗せてもらい登山口まで誇んでもらったわけですから。もちろん荒川小屋は初めてとなるのですが、何故ここにしたかというとコースタイム的な選択だけでなくあるもう一つの理由がありました。
荒川小屋オリジナルの「悪沢岳」Tシャツ購入は今回の山歩き裏ミッション
それは、荒川小屋で販売している悪沢岳のオリジナルTシャツの購入です。
山小屋のTシャツ集めは密かな趣味の一つなのですが、この「悪沢岳」Tシャツの存在を知ってから、泊まるなら荒川小屋!と決めていました。
さて、赤石岳山頂をいったん下ります。
分岐の標識を目印に、荒川小屋へ向かいます。まだこの時点では小屋は見えていません。
まずは小赤石岳へ。この山は3081mあるにもかかわらず、赤石岳の一部?と見られているのか、単独のピークとはあまり扱われていない様子です。
なかなか立派な山頂標識が建てられていてビックリです。ここから今登ってきた赤石岳が良く見えます。
「赤石岳」少し離れて見ると益々大きな山だということがよくわかりました。
赤石岳、小赤石岳、小赤石岳の肩までの稜線は3000m級の稜線歩き。風がとても強くて大変でしたが、眺望抜群でとても気持ちのいい稜線歩きが楽しめます。ここを独り占めというのは今回本当に贅沢でした。
ここ小赤石岳の肩からは一気にザレた九十九折の道を一気に下り、大聖寺平という広く平坦な場所へ進みます。
ここは雨や霧が出るととても方向が分からなくなりそうなところですね。目立った目印がない場所でした。
大聖寺平から荒川小屋までは山の側面のトラバース道。この道はとても気持ちがいい道でした。どんどん荒川三山が近づいてきます。そして、目の前に赤い屋根の荒川小屋が現れます。
荒川小屋到着、Tシャツもゲット
出発から7時間10分で荒川小屋へ到着。お疲れさまでした。早速扉を開けると土間が広がり、その奥に受付が。その側には「悪沢岳Tシャツ」も販売しています。
結局1日目の行程はコースタイム10時間55分に対して約65%の時間(休憩込み)で歩き切ることが出来ました。
「悪沢岳」Tシャツが売っている
自炊は離れた冬期小屋で
到着した時間が4時を過ぎていたこともあり、小屋の食事提供時間は終了。もちろん織り込み済みだったので、持参した食材を調理していただくことに。カップラーメンやソーセージ、味噌汁などと行動食を食べてお腹いっぱい。
食事の前にビールとTシャツも無事にゲット!ミッション完了です。
時間は5時30分過ぎ。時間としてはそれほどではないものの、とても充実し、長い時間を満喫しながら歩いたように感じる1日。一気に辺りは暗くなり始め、布団に入り込むとあっという間に寝ていきました。
2日目に続きます。
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