南アルプス赤石岳・悪沢岳周回縦走(2日目)
最終更新日 2023-12-05前編の続きとなります。
もう随分と前のことになってしまいましたが、南アルプス南部の赤石岳・荒川三山(悪沢岳)を単独で歩いてきました。
2018年夏の山歩きで最も印象に残った2日間。
後編は荒川小屋から出発し、荒川三山をめぐり、千枚小屋を経由して椹島へ下ります。
目次【お好きなところから】
ご来光を期待して荒川小屋を早出しよう
初日、約11時間のコースタイムとなる椹島から赤石岳を経て荒川小屋へ至るルート。キツイ登りの続くルートですが、とにかく雄大な南アルプスの中を歩いているという気分の高揚感が勝り、疲れも覚えずに歩き切ることが出来ました。
そして小学生以来となる小屋泊となった荒川小屋。空いていたこともあって熟睡。起床予定時刻としていた午前3時ちょうどに目を覚ましました。
前日ザックや荷物については片付けて準備していたため、まだ暗闇の小屋の中をソーっと移動し、共用スペースとなる食堂へ。
明るく見えますが、実際にはヘッドライトの明かりを消すとまだ真っ暗。
数名の登山者が静かに出発準備に取り掛かっています。軽く会釈を交わしながら、私も手持ちのオニギリやパンを急いで口に頬張り簡単に朝食。食堂に準備されていた温かいお茶をいただくと、「よし」と気合が入りました。外に出ると雲が全くないまだ真っ暗な空。ご来光を期待して登り始めます。
荒川前岳へ、薄明りの中を稜線へ向けて歩く
小屋を出発したのは3時45分。薄明りの中を稜線へ向けて標高を上げていきます。
この日は荒川三山の縦走。まずは荒川前岳を目指します。暗いながらも道は明瞭。ゴロゴロした石の道をジグザグに登ります。
しばらく登っていくと東の空が染まり始め、富士山がそのシルエットを表し始めました。
振り返ると荒川小屋にも明かりが増え始めました。この日、椹島発のバスタイムリミットは15時30分。それを逃すと長い長い林道を歩かないといけなくなります。早出は絶対。
登り始めて50分ほどすると、随分とあたりが明るくなりました。もう少しで荒川三山と呼ばれる前岳、中岳、東岳(悪沢岳)をつなぐ稜線に出ます。危険個所などは特にありませんが、稜線に近づくにつれて風がとても強まってきます。
振り返ると朝焼けで赤くなった空とまだ青自白い富士山。思わず綺麗な姿に見とれてしまいました。日の出まであと僅か、急いで稜線に上がりたい。稜線でのご来光間に合うかな?
荒川小屋から1時間10分で稜線へ出ました。朝一番なだけに身体が思うように動きませんでした。そして稜線に出た途端に爆風です。強い風にフラフラしながら南西方面へ荒川前岳へ向かいます。富士山がとても綺麗で感動しましたね。
前岳向かうには稜線を南西の方角へ少しだけ戻ります。時間にして5分ほど。
4時59分、この日一つ目のピークとなる荒川前岳へ登頂。標高は3018ⅿ。貸し切りです。
東を見ると、今から向かう悪沢岳(東岳)とその手前の中岳がもう目の前です。朝陽を浴びながら3000ⅿを超す稜線歩きという贅沢な時間の始まりです。
荒川中岳でご来光
稜線分岐点を挟み、前岳と中岳間のコースタイムは15分と目と鼻の先です。強い風に体を煽られながら分岐点まで戻り、次に中岳を目指します。
目の前に富士山
振り返ると赤石岳
この付近が今回の山歩き中最も綺麗な景色でしたね。相変わらず風は強いので、一瞬おさまる時を狙ってシャッターを切っていました。
お疲れさまでした、5時15分荒川中岳3083ⅿ到着です。
そしてここでご来光となりました。
正面の荒川東岳(悪沢岳)の肩から朝陽が昇りました。
後からインスタに上の写真をアップしましたが、「お正月みたい」とコメントをいただきました。確かにそんな感じです。
直下にある避難小屋からご来光を見に来た方に記念に写真を撮ってもらいました。
豪快にフレアが入っていますが、これはこれでいいのかも。
富士山と悪沢岳とご来光。とても美しい景色でした。今年の山歩きの中でも最も印象深い瞬間。忘れられません。
赤石岳もオレンジ色に染まりました。綺麗でしたね。
さあ先を急ぎましょう。太陽が出ると強い風が吹いても温かい。ありがたいです。
避難小屋でトイレ岳
ご来光を拝んだら、急ぎ中岳直下の避難小屋へ駆け込みます。お目当てはトイレ。こんな稜線上にあるというのは本当に助かります。
中岳避難小屋はとても立派な建物でした。
前日頑張ればここまで来れただろうなと思いますが、まあそれは結果の話。悪沢岳と富士山の元での星空もいいだろうなと想像し、次の機会の楽しみにしました。
ここでもう一つピーク?「トイレ岳」へ急ぎます。標高は3060ⅿだそうです(笑)
トイレを済ませ、この先の悪沢岳へ向けて小休憩。オニギリを食べてエネルギーチャージです。
日本百名山「悪沢岳」へ
悪沢岳という名前は山好きな人以外は殆ど知られていないことでしょう。国土地理院地図には「荒川東岳」とあるようですが、日本百名山の著者である深田久弥は、この東岳をとって「悪沢岳」と呼び、百名山に選定したということです。
登ってみて思うのは、確かに前岳・中岳はあまりにも近すぎて、一つ一つをピークと見るかというとどうかなと思うところがあります。
山名の由来では悪沢の源頭にあり、甲州の漁師が言った「悪沢岳」という言葉から来ているとか。とにかく、一度聞いたら忘れられない山名です。ちなみに標高は3141ⅿ、日本第六位の高峰となります。
では悪沢岳へ向かいましょう。中岳からはコースタイムで1時間30分となります。
まずは一旦下ります。最低鞍部まで下りきってから登り返します。この登り返しがザレて岩場続きとなるので注意が必要です。
5時57分、最低鞍部に到着。15分かからずに下り切りました。ハイマツの中の下りが続き、ここまで危険個所はありません。
ここからは登りですが、今日はここを登り切れば後は下るのみ。気合を入れて頑張りましょう。見ると結構急な登りがジグザグに続いています。
一歩一歩確実に登ります。個人的にはあまり好きではないザレの登り・・・。スリップしまくって嫌でしたね。結構急な岩場、切れ落ちた崖のような場所もあり、神経を使いました。
登ります。
赤石岳も随分遠くなりました。
そして、最低鞍部から40分ほど。6時41分、悪沢岳3141ⅿ登頂です。お疲れさまでした。
荒川小屋から約2時間。最高の時間でしたね。
真っ青な空に富士山が映えます。
何度振り返っても形のいい赤石岳。素晴らしい絶景がこれでもか!と広がっていました。
長い長い下山と千枚小屋でのお楽しみ
山頂で15分ほどゆっくりして、午前7時少し前に下山開始です。椹島発の最終バスまでは8時間30分。コースタイムで7時間10分ですから普通に歩けば十分間に合います。
悪沢岳からまずは巨岩の折り重なるルートを通過します。抜けた後には千枚岳を経由し、椹島までの休憩ポイントとなる千枚小屋を目指します。
大きな岩がゴロゴロ折り重なったルート。浮石等は無さそうなので危険な様子はありませんが、注意して進みます。とにかく7時間超の下山。炎天下と相まって、間違いなく体力を消耗します。標高差は約2000ⅿ・・・。
7時11分、丸山通過。ここでもまだ3032ⅿあります。
どんどん飛ばして走るように駆け下りました。
途中にはこんな感じのアルミの梯子も。一応岩に固定されていましたが、ちょっと緊張しますよね。
上から見るとこんな様子。このあたりは結構崩壊していました。
7時39分、千枚岳通過。後ろに見えるのが悪沢岳です。
千枚岳からジグザグの道で標高を下げていきます。少し直射日光を遮ることが出来てホッとできました。
山頂から1時間、7時56分に千枚小屋へ到着です。
急激に気温が上昇してきて汗が滝のように落ちます。
小屋に飛び込んで、思わず「ビール下さい!」とお願いしました。普段はテン場以外の登山中に飲むことはないのですが、この日は言わずにいられませんでしたね。
小屋番さんからは「あとは下山だけですか?」と聞かれ、そうだと言うと出してもらえました。登りだというと注意されるのかな?
しばらく外で待っているとおでんと一緒に生ビール到着!富士山を正面に見ながら最高の朝食です。生ビールの美味しかったこと。
食後は少し休憩し、まだまだ長い下りに備えました。千枚小屋は水も無料でした。
たっぷり30分ほど休憩し、8時25分に千枚小屋を出発。
長い長い下山の途中、あまり多くの登山者に出会わなかったのも南アルプス南部の特徴なのでしょうか。比較的広く、真っすぐな登山道をひたすら下り続けます。途中の楽しみは美しい苔やキノコ。展望は一切ありませんが癒されます。
そして、汗だくになりながらも11時ちょうどに椹島近くの林道に続く吊橋に到着。本当にお疲れさまでした。
その後灼熱の林道を15分ほど歩き、11時15分過ぎに無事に椹島へ到着しました。
この日のコースタイムは10時間45分。実際には7時間30分。コースタイム比は69%でした。しかし、残念ながらバスは出た後。次のバスまで1時間以上は待たなければいけません。
椹島ロッジで蕎麦やアイスクリームを食べてノンビリ過ごしました。
結局バスに乗り込み、駐車場まで戻ってきたのは2時ちょうど。こうして無事に1泊2日の赤石岳・悪沢岳の周回縦走登山を終えることが出来ました。
赤石岳・悪沢岳を登ったことで、南アルプスで残す3000ⅿ峰は聖岳。国内の3000ⅿ峰では他に御嶽山と富士山を登っていませんが、2019年には全て登れるといいかなと思います。
赤石岳・悪沢岳まとめ
時期的には猛暑続きのとても厳しい時期の登山となり、体力の消耗は激しかったのですが、天候には恵まれて絶景に出会うことが出来る登山となりました。
このルートの魅力は雄大な南アルプスの山々を静かに歩くことだと思います。椹島を起点とした周回は登りやすく、今回は時計周りで登りましたが、多いのは反時計周りルートのようです。次は反対からというのもいいかなと思いました。今回は終わりかけていましたが、高山植物の季節や秋の紅葉時期も良さそうです。チャンスがあればまた来年再訪したい山々でした。
装備など
今回はテント泊ではなかったので荷物はとても軽量です。
テント泊でないと40Lはちょっと大きすぎましたね。かといって手持ちの20L程度だと小さすぎ。もう少し軽量コンパクトなテント泊・小屋泊兼用となるザックを準備しないといけないと感じました。それでもフィヨルド40は夏場のテント泊で今年大活躍してくれました。背負い心地も良く、容量もちょうどいい。ほぼ被らないのもいい。
シューズは軽量なスポルティバ「ストリーム」で。この靴は今年活躍してくれました。ゴアテックスサラウンドを搭載し、蒸れも少なく快適です。ただ、ザレた登山道では若干滑ることが多かったように思います。来年も使っていくことになると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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