なぜ歩くのか、なぜ登るのか「グレートトラバース　日本百名山ひと筆書き」

南北3000km　日本全国を巡ってみたいと思ったことのある人は少なくないでしょう
しかし、実際に実行に移し、達成できた人は多くはない
ましてや、日本全国の名のある百の頂に立ちながら、日本を歩きとおし、海を渡った人は彼しかいない
田中陽希著
「グレートトラバース　日本百名山ひと筆書き」

プロアドベンチャーレーサーの田中陽希さんが、昨年挑んだ前人未到のプロジェクト
そのスタートからゴールまでの道のりを、本人の記録からまとめた著作
2時間～3時間で読めるロードムービーのような、というかまさに日本百名山を歩きながら書き記した一冊
その脅威の記録の印としてはもちろんだが、やはり共感をするのは悩みながら苦しみながらも旅を続けるその姿にある
夢破れ、飛び込んだアドベンチャーレースの世界
思いの外多くの声援に悩みながら、何のために、誰の為に登るのか葛藤する様
痛みに耐えながらも歩く北海道の原始の森
彼は歩くことで、まだ見知らぬ土地や山への興味を持ってもらい、訪れてみたいと思える人がいてくれたらいいと願う
日本の自然が大好きだと言う
読んでいると、まだまだ見ぬ日本の自然を旅してみたい＾＾そう思える一冊
文中より
「8月21日。5時半に五色沼を出発。32km先の喜多方を目指していると、昨日スキー場で会った小学生がお父さんと一緒に会いに来てくれた。『昨日はありがとうね！』と話しかけると、『一緒に歩いてもいいですか』と突然の申し出。
　ということで、ちょっとの間だけ、喜多方に住む小学5年生の『てっちゃん』と歩くことになった。学校のこと、友達のこと、喜多方のこと、お父さん、お母さんのこと、自分のこと・・・。小学生の思いをたくさん聞いた。　（略）少しの間だけ、先生になったような気分で嬉しかった。」
「埼玉県戸田市の野田橋付近を走っていると、『田中陽希さんですか？』と男性に話しかけられた。『家庭を持って、家業を継ごうと決心してから不安を抱えていたんのですが、そんなときに自分と同じ年齢の人がすごいことに挑戦していると知って、大きなパワーをもらえたんです”負けられない！”と思いました』その言葉に、僕が逆にパワーをもらえた気がした。」
そう、私も長男みーと一緒に武奈ヶ岳で彼を待った

その時、私の目の前でもう60はゆうに超えているであろう一人の男性が田中陽希さんの姿を一生懸命ビデオに撮っていた
撮影班からも理由を聞かれた男性は「体を悪くしている妻が大ファンで、今日も本当は来たかったけれどこれずに家で待っている。その妻に見せてあげたい」と登って来たと話されていた
かくいう私も彼からたくさんの勇気や希望をもらっているんだろうなと感じる
一歩背中を押してくれる本

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